約 4,470,537 件
https://w.atwiki.jp/sousakurobo/pages/471.html
統合歴329年9月15日 ―お前は不利な生身での戦いで私を圧倒し、有利な筈のギア戦で私に敗北した。原因は何だと思う? 実機の対戦で初の敗北を味わって二週間が経過…更に言えば、小野寺とのシミュレーター訓練で地を舐め続けて二週間が経過し、守屋は一人、屋上に寝そべり流れる雲を眺めながら、新たに加わった仲間の投げかけた問題の答えを探していた。 「…全然、意味が分からん。」 不利なのに勝り、有利なのに劣る。これではまるで頓知だ。どんなに考えても答えの糸口が見つかる気配は全く無い。 「何が?」 「何がって………お前、いつから其処に居た?」 聞き慣れた声に釣られて、何気無く首を左に傾けると霧坂が腰掛けていた。 小野寺が霧坂に電磁ロックの解除方法を教えたと言っていたのを思い出して、守屋は辟易する思いで顔を引きつらせた。 別に霧坂から隠れる為に屋上に来ているわけでは無いが、あまり良い気はしない。だからと言って拒絶しているわけでも無いのだが。 「10分くらい前からかな?凄く考え込んでいるみたいだったから観察させてもらったよ。」 そう言って霧坂が手を開くと眉間に皺を寄せて考え込む守屋の立体映像が数枚、クルクルと踊りまわった。 これでは、観察と言うよりも盗撮だ。今更、止めろと言って考え直す様な相手でも無いし、既に慣れた。 「これは重症だな…昼休みにまで何の用だ?」 守屋は気分を害する以上に静かな屋上で霧坂の気配を察知するどころか、足音さえ気付かなくなる程考え込んでいた事に苦笑した。 「ほら、9月と言えば定番の催し物があるからね。」 霧坂は満面の笑みで、立体映像を閉じ体育祭の種目決めのプリントを守屋の眼前に突きつけた。 何の気紛れか、ギアに関係しない催しのまとめ役など面倒臭いと拒否し続けて来た霧坂が体育祭実行委員の一人として名乗りをあげたのだ。 「なあ、霧坂?」 「既に出たい種目既に決めてる?職権乱用しまくりで好きな事、なんでもやらせてあげるから!」 「いや。体育祭は欠席させてもらう。」 守屋はプリントを左腕で押し退け、はしゃぐ霧坂から目を背け立ち上がった。 「は?何で?月のモノ?」 「男だから、そんなモノは来ない。」 ふざけた事を言いながら詰め寄ろうとする霧坂に守屋は苦笑しながら、霧坂相手には珍しく…恐らく初めて、柔らかな口調で理由を語った。 「俺が居たら、クラスの連中が怖がるだろ?」 霧坂は面白味の無い理由のだと思い、普段通り守屋を振り回してやろうと口を開きかけようとして霧坂は絶句した。 守屋が暗く無感情な表情の上に無理矢理、迷惑そうな表情を貼り付けていたからだ。 「皆が良い気分で頑張れるのなら、俺が居ない方が良い。放課後の種目決めの時はスタジアムに行っておく。」 守屋は霧坂から視線を外して立ち去ろうと踵を返すと、霧坂は慌てて守屋のシャツを握った。 「いや、ちょっと待ってよ…」 守屋は改めて、霧坂に向き直った。表情は相変わらず取って付けた様な苦笑い。 「霧坂。部活以外の時まで無理して俺に付き合う必要は無いんだぞ?」 「…ッ!?」 「あまり、俺と一緒に居たら霧坂まで変な目で見られかねない。俺の事は放って…」 曇天の空に小気味の良い乾いた音が木霊した。 「ふざけんなッ!!アンタ、逃げてんじゃないわよッ!!」 霧坂は顔を真っ赤に染め上げ、今にも泣き出しそうな表情をしていた。 ―どんな人間にも感情はある。 霧坂でも怒る事があるんだなと若干、的外れな事を考えていると小野寺の言葉が頭の中に過ぎった。 「悪い。失言だったな…だけど、俺の事は放っておいてくれて良いから。」 守屋は赤く腫れ上がった頬を気に止めず、屋上から立ち去った。 一方の霧坂は自分が何を言うべきなのか、何をするべきなのか分からず立ち尽くしていた。 大体の事は何でも笑い飛ばせる自信があったのに、どうにも最近は上手く感情のコントロールが出来ない。 「別に…無理なんてしていない…ッ!それに守屋君が良くても私がイヤなんだよ…」 守屋をクラスに馴染ませるチャンスと思って、体育祭の実行委員などという面倒臭い事この上無い役目を進んで請け負ったにも関わらず、その代価が拒絶の言葉とは、ちゃんちゃら可笑しくて笑いを通り越して怒りが込み上げ、気が付いた時には守屋の頬を引っ叩いていた。 そして、放課後― 霧坂は教卓に両腕を突き、クラスメイトを睨みつけるように見回してから口を開いた。 「種目決めの前に皆に話があるんだけど。」 「どうしたの?」 霧坂が僅かながらに言葉に怒気を含めているのも気付かず、クラスの男子生徒の一人が聞き返した。 夕凪太郎。未だに二次成長期の訪れていない八坂高校一、女装の似合いそうな少年である。 他のクラスメイトも夕凪に倣い、霧坂へ視線を集中させた。 「皆、守屋君に対して怯え過ぎなんじゃない?危ない所を助けてもらった事はあっても、危ない目に合わされた事は無い筈だけど?」 守屋が八坂高校の全校生徒を救った5月の違法ギア襲撃事件― あの時の恐怖を易々と忘れられるわけが無く、皆一様に苦々しい顔付きになる。 教室で雑談している最中、突如として鋼鉄の悪魔が校庭に降り立ち、有無を言わさず黒々としたバズーカの砲口を突き付けられた記憶は今でも鮮明に残っている。 そして、逃げ出そうにも身動きの一つでもしようものなら、漆黒の宵闇よりも暗い砲口から砲弾が吐き出され、教室や友人諸共、全身をバラバラに引き裂かれて死んでしまうのでは無いのかという根拠の無い恐怖心のせいで逃げ出す事さえ出来ないでいた。 恐怖心に打ちひしがれた彼等に出来た事と言えば、まだ死にたくないと心の中で祈りながら、身体を硬直させる事だけだった。 何も出来ず絶望していた正にその時だった。白銀の装甲に身を包んだギアが、守屋一刀のアイリス・ジョーカーが轟音と共に現れたのである。 (霧坂の悪ノリのせいで)全身を歪ませたその姿は天が使わした軍神とは程遠く、地獄の底から這い出て来た悪鬼羅刹のようでもあった。 その上、違法ギアを一蹴した後、左腕と右足は千切れ落ち、地獄へ帰還すると言わんばかりの爆発と異音を伴い地に崩れ堕ちた。 ヒーローのような華々しい活躍とは程遠く、不器用で不恰好で滅茶苦茶ではあったものの、命の恩人である事は事実なのだ。 ―君の行いに勇気を持った者、感謝の念を持った者が居る事を忘れないでくれ。 事件翌日に八坂高校理事長兼、スポーツギア部顧問兼、スポンサーである弥栄栄治が語った言葉である。 実際、守屋の行いに感謝している者は数多い。 特に転入初日に起こった血の惨劇に視覚的、直接的に関わっていない者等は守屋に対してそれ程、恐怖を抱いているわけでは無い。 スポーツギア部の部員達による所も大きいが、関わりの無い人間に対して恐れ怯える事が出来る程、器用で滑稽な奴はそう多くは無いのだ。 「そ、そりゃあ…そうなんだけどさ…守屋って、何か近寄り難いって言うか、何て言うか…」 西行幸仁。彼もまた守屋一刀に対し感謝の念を持つ生徒の内の一人である。 初日の乱闘事件以降、守屋は何かしらの暴力沙汰を起こす事も無く、自らの危険も省みず自分達の危機を救ってくれた。 恐らく、悪い奴では無い…寧ろ、間違いなく良い奴なのだろう。だが、如何接して良いのかが分からない。 情けない話だが、皆が守屋に怯えているのを見て、それに吊られて自分も怯えてしまう。 頭では良くない事だと理解しているが、今更どの面下げて守屋に接して良いか分からないのだ。 「皆が怯えているから守屋君が気を使って、近寄らないようにしているだけだっての!! 皆が怖がるからって体育祭に出ないって言っているわ。皆がいい気分で頑張れるなら、その方が良いからって!! クラスで孤立していても、ちゃんとクラスの事を考えてくれているんだよ。それでも怖いッ!? 私は何度も守屋君の家に行った事があるわ。勉強を教えてもらった事もあるし、家族と食事だってした。 図書館が占拠された時だって、身体張って守ってくれた。だけど、一度だって酷い事をされた事も言われた事も無い! 戦う術が優れているだけで、普通の人と何も違わないのに無闇に怯えて、拒絶する皆の方が余程、非人間的よ!!」 霧坂の慟哭染みた叫びが教室に響き渡り、水を打ったように静かになる。 途中から自分が何を言っているのか分からなくなっていた。ただムカついた。口を開けば開く程、ムカついて仕方が無かった。 まともに息継ぎをしていない気がするけど、知った事じゃない。誰も彼も如何しようも無い程ムカついて仕方が無いのだから。 「あの馬鹿…廊下中に響いているじゃないか…」 霧坂の悲痛な叫びは教室だけでは無く一年の教室棟に響いており生徒達が何事かと守屋達の教室に視線を向け立ち止まっていた。 守屋は何とも言えない表情で周囲の生徒達に気付かれないように窓から飛び降りた。 人目に付くので、あまりやりたくないが、あの場に居る生徒達に気付かれたら…きっと居た堪れない気分になる事だろう。 守屋は霧坂の慟哭から逃げるようにスタジアムに向かって走り出した。 スタジアムに着くと薙刀を両手にウォーミングアップをしている小野寺を鉢合わせになった。 「守屋…妙に目が赤いな?お前がどんなに私に憧れても紅眼にはなれんぞ?」 小野寺は目を真っ赤に腫らした守屋の顔を見るなり見当外れな冗談を口走った。 「違いますよ…突風に煽られたゴミが大量に眼に入っただけです。」 「ふむ?…そうか。」 的外れな冗談なのは自覚しているが、守屋が力も覇気も無い苦笑を返すのは想定外だった。 何時もなら、此処で詰まらない漫才のような掛け合いになる筈なのだがと、小野寺は守屋の表情をチラリと伺う。 そして、何かに納得したかのような表情をして追求する事をやめた。 「それよりも、小野寺先輩付き合ってもらえます?無性に暴れたい気分なんですよ。」 それに気付く事も無く、守屋は力無く笑いながら申し訳無さそうに小野寺に練習開始を促した。 「私は守屋の練習相手として八坂にスカウトされたんだ。…いくらでも胸を貸してやろう。気が済むまで、ぶつかってこい。」 小野寺は柔らかい口調と暖かい声色で、当然だろうという表情で真っ平らな胸を叩いた。 「良い奴ばかりだな…」 ―守屋一刀が八坂高校のスタジアムで擬似的に生成された大地に容赦無く、叩き付けられている頃 砕牙州では、もう一人の守屋。守屋剣が薄暗い広間で頭を垂れていた。 「翁…申し訳御座いません。翁に築いて頂いた太平の世を我々が維持出来ませんで…」 守屋剣が翁と呼んだ男は謝罪の言葉に気を止める事もせず、眼前の小さな花畑を硬い表情で眺めていた。 薄暗い部屋に閉じ込められた花畑…いや、花畑と言うにはおこがましい。漸く、双葉が芽吹いた物ばかりで 土が露出しており、花を咲かせたのは極僅かだ。 眺めているからと言って花が咲くのが早くなる筈も無く、翁と呼ばれた男―君嶋悠は漸く、剣に向き直った。 赤い髪にすらりと伸びた手足に真っ直ぐに伸びた背筋。そして、その顔には年季を感じさせる皺は一つも無く 翁という呼び方は余りにも相応しく無く、老いを語るには、まだまだ厚かましい年の頃に見える。 「誰も彼もが当然の様に明日を享受する事の出来るこの世界は充分に太平よ…何もこのような老骨の機嫌を伺う必要など無いのだぞ? ヒト同士での殺し合いならば大いに結構。それがヒトたる所以…ヒトがヒト以外のモノに蹂躙されなければワシは一向に構わん。」 「しかし…これでは翁が求める者を失う惧れがあります。」 だが、周囲の人間は彼の事を翁と呼び、彼も自分自身を老骨を自称している。 「アレの覚醒を促し、覚醒を確認するのはワシの役目であって主等の役目では無い。 そして、存在しない筈の人間の為に世界の道理を乱してはならぬ。この世界はワシの物では無く主等の物なのだからな。」 自称老骨は、静かに言葉を紡いだ。それは、余計な真似をするなという拒絶と言うよりも、まるで老人が幼い孫を窘めるかのような口調だった。 「ワシがこの世界に存在する限り、アレは死なん。と言うよりも死ねん。」 君嶋は再び、剣から花へと視線を移した。剣からは、その表情を伺い知る事は出来ないが物心が付いた時から付き合いだ。 老骨殿が、どの様な表情をしているかは大体の想像が付く、種子を見守る表情は暖かくもあり、必死でもあり、焦りでもある。 そして、種子を君嶋に与えた者へ対する無尽蔵に湧き上がる混沌とした憎しみが混ざり合った表情をしている事だろう。 「ワシは此の侭、役目を果たす為に静観する。主等は主等の法と秩序を保つ為に役目を果たせい。」 「ハッ…では、自分は砕牙の内乱を鎮圧して参ります。」 剣は自らの役目を果たす為、広間から立ち去ろうと踵を返すと君嶋の呟きが耳朶を叩いた。 「世界という奴は…忌々しい限りよの。何処までもワシ等人間を虚仮にし腐りおる。」 「翁…」 剣は慌てて振り返り、何とも言えない表情を君嶋に差し向けた。世界という言葉に置き換えたとしても、それ以上は良くないと。 「ただの愚痴じゃ…聞き流せい。ワシが無能だとしても、二度とヒトを滅ぼしはせんよ。」 君嶋は不敵な笑みで物騒な事を口走り、剣はどう返答すべきかという表情で口を噤んだ。 「今度こそ必ず、滅ぼす事無く守り抜き役目を果たして見せよう。 …無駄話は此処までじゃ、この世界は主等の物じゃ。所有者である主等の意思で役割を果たせ。」 「ハッ…では、失礼致します。」 物騒な上に話の所々をぼかされ、彼の言いたい事を完全に理解出来ているわけでは無いが、この自称老骨殿が大丈夫だと言っているのであれば、間違いなく大丈夫なのだろうと剣は出立した。 「この世界も間も無く終わりだと言うのに種子は未だ芽吹かず…全く、こうも平和だと動き方が分からぬな…」 誰も居ない広間で一人愚痴るものの自称老骨の基準では平和過ぎる世界だと、その表情は実に満足気だった。 統合歴329年9月16日 ホームルームが終わり、守屋は少しばかり憂鬱な気分で帰り支度をしていた。 何も考えずに大暴れしたい気分だというのにも関わらず、今日は一斉メンテナンスの日で選手陣は休みの日なのだ。 更に霧坂が体育祭実行委員の仕事で朝、昼と慌しく働いており、守屋に纏わり付いて来なかった為 今日は一度も口を開いていない事に気付き、憂鬱さが更に加速する。 近付くなと言っておいて、近付かなくなったらこの様で、自分の女々しさに心底辟易した。 尤も―昨日の昼休みと放課後の一件のせいで顔を合わせ辛いし、何を喋って良いかも分からないのだが。 何はともあれ、今日の守屋は非常に暇なのだ。一人で遊びまわる趣味も無く、大人しく勉強をしようという気分でも無い。 まだ日は高いが、父の課した訓練課題を普段より多めにこなそうかと考えていると、未だに顔と名前の一致しないクラスメイト達が緊張した面持ちで守屋の前に並んでいた。 「ね、ねえ…も、守屋君。ちょっと良いかな?」 「あ、ああ…良いけど…」 お互い挙動不審になりながらの受け答えだが、夕凪太郎に代わり、西行幸仁が意を決したように口を開いた。 「あ、あのさ…これから、俺んチに集まってだな。その…エロムービーの鑑賞会をだな…い、一緒に如何だ?」 謎の誘い文句に守屋の顔がアホになって時が止まり、残暑のきつい陽射しが冷気に変わった気がした。 (何と言うか…最低な誘いだな。大方、昨日の霧坂のせい…いや、霧坂のお陰と言うわけか。 此処で拒絶したら、この先も怖い奴…か。確かに俺もいつまでも逃げてばかりではいられないよな…) 何時までも絶句してはいられないと、守屋は幾分か重くなった気のする口を開いた。 「俺…今まで、その手の物と縁が無かったんだ。是非、参加させてくれ。」 最低な申し出ではあったが、守屋一刀も16歳の健全な青少年であり歳相応に興味を抱いており、色んな意味で好都合だった。 「お、おう!そうと決まれば行こうぜ!!」 男同士で友情を深めるとすればエロしか無いという結論が出たものの、いざ本人を前にすると もしかして、自分達は相当な馬鹿野郎なのでは無いかという不安が破裂寸前まで膨れ上がっていたのだ。 守屋が転入して来る前は多くの女子が色めき立っていた事もあって、守屋一刀という男は無駄にモテて ヤる事はしっかり、ヤっていて興味無いとか言われたらどうしようかという不安があったのだ。 だが、意外にも守屋も女に無縁だったらしく乗り気である事と、自分達と同じく童貞であろう事に酷く安心した。 「守屋くーん!アリア先輩達がカラオケ行こうって言ってるんだけど…何、この有象無象?」 守屋の懸念していた昨日の出来事なぞ何のその。霧坂は、にこやかに守屋に声を掛けると何気に酷い暴言を吐いた。 霧坂の普段と変わらぬ様子に守屋は安堵し、普段と変わらぬ口調で返答した。 「すまん。歳方先輩達には後日、埋め合わせをすると伝えておいてくれ。」 「ワ、ワリィな。霧坂。これから守屋と遊びに行く事になってんだわ。」 「ま、そう言うことなら仕方無いか。残念だったね。折角、ハーレムだったのに。」 「ハーレム…?」 余談ではあるが、歳方アリアは阿部辰巳と、内田燐は三笠慶と其々、交際中である。 彼氏持ち二人に霧坂の三人でハーレムと言われても心が躍る筈が無い。因みに加賀谷は余った。 「何、その顔。先輩達にある事無い事言うわよ?Hなムービーの鑑賞会するから来れない~って!」 「ちちちちちち違う!断じてそんな事は!!」 「何、マジになってんの?って、もしかして、本当にHなムービの鑑賞会!?」 内心でせせら笑っていると表情に出ていたようで秒殺で見抜かれた上に霧坂の冗談が冗談では無く、大正解なせいで必要以上に守屋は焦りを覚え、そんな様子に霧坂は僅かながら軽蔑の眼差しを向けた。 「そんなわけが無いでしょ。新作のロボットゲームが出たから、守屋君も一緒に如何かなって誘ったんだよ。 普段からギアに乗っているから、この手のゲームには強そうだしね。」 此の侭、放置していたら守屋の撃沈は免れない上に此方にまで飛び火しかねない。 夕凪はすかさず、それらしい理由を瞬時に組み立てて守屋をフォローした。 こちとら、百戦錬磨のエロ兵なのだ。1分もあれば100通りの言い訳を用意出来るし、この幼い顔立ちを持ってすれば説得力は倍増する。 「何だ、そういう事か。驚かせないでよね。」 だから、勘の良い霧坂ですら簡単に納得させる事が出来る。 そもそも、説得力以前に本気にしていない上に霧坂自身が夕凪達に興味が無く何が真実かなど、どうでも良い事だからだったりもするが… 「そういった事に耐性が無いのに、お前が変な事を言うからだ。」 何はともあれ、夕凪のフォローのお陰で守屋は平静を取り戻し、普段の調子で霧坂に苦言を漏らした。 「ゴメン、ゴメン。それじゃ、また明日ね~!」 「ったく…アイツ、変な所で勘が良いな…」 笑顔で手を振りながら走り去っていく霧坂を見送り、九死に一生を得たという表情をする守屋を見て、夕凪達は今更ながら、守屋が超人でも無ければ、悪鬼羅刹でも無い普通の人間なのだと認識を改めさせられた。 そして、西行家にて― 普段ならば、360度何処からでも視聴可能な立体映像を中心に気に入った位置で鑑賞するのだが、今日は普段とは違っていた。 「すっごい、釘付けだね…」 自分達とそれ程、年の変わらない少女の艶かしく、あられもない姿に 守屋は顔を朱に染め、口を半開きにして文字通り、目の前の映像を食い入るように…文字通り釘付けになっていた。 普段ならば奇声を発して騒ぎながら見るのだが、夕凪達は守屋の意外な姿を眺めていた。 「さっきの反応と言い、マジでエロ動画見るの初めてだったんだな…」 「あ、ああ…今まで見たり、触れたりする機会無かったし…」 ムービーの終了と共にクラスメイトの一言で我に返った守屋は若干、前屈みになりながら居心地の悪そうに視線を逸らした。 「そんな、守屋にはお近づきの印って事で、コレを進呈だ!」 「マジかっ!?」 余りにも普通の健全な男子らしい反応をする守屋に気を良くした西行は秘蔵のディスクを守屋の前に差し出すと、これまた普段の守屋からは想像出来ない程の勢いで鼻息荒く、西行に喰らい付いた。 「も、守屋君…?」 「あ、いや…悪い。やっぱり、受け取れない。」 夕凪を始めとする若干、引き気味のクラスメイト達の姿を目の当たりにして、頭に登った煩悩と血液が一気に沈み冷静になる。 と、口で遠慮はするものの、西行の手に握られたデータディスクを未練がましい表情で見つめていた。 「欲しいのは山々なんだけどな…霧坂に見つかったら、後が大変だ…」 守屋は苦虫を噛み潰したような表情で吐き捨てた。この時ばかりは霧坂の存在が疎ましい事この上無い気分だった。 だが、西行達からすれば面白い話のネタ以外の何でも無い。 「ほっほーう?」 「な、何だよ?」 西行のわざとらしい感嘆の声に何と無く嫌な予感を感じ、後ずさりしようとすると四方をニヤケ面したクラスメイトに囲まれていた。 「霧坂に見つかったら、後が大変だ…か。守屋君って霧坂さんと付き合ってんの?」 「ち、違うッ!アイツが、よくウチに出入りするから見つかったら…その何だ?困るだろッ!?色々と!! その手の物は一切、持ち合わせていないって言っているのに、掃除するフリして探し回ったりするんだ、アイツは!!」 男だか女だか、よく分からない面したクラスメイトの半ば暴言にも近い質問に守屋は口から心臓が飛び出る思いをしながら、意味不明な言い訳をまくし立てるが、誰も彼も大変だねーなどと思うはずも無く、それからどした?と興味深そうにしている。 「ふーん。って事は霧坂が、守屋を振り向かせる為に色々、頑張っているってわけだ!」 「お、お前等…その辺で勘弁してくれ…アイツは俺を困らせる為に色々、頑張ってるだけだ。」 「それは違うでしょ。昨日さ、霧坂さんにスッゲェ怒られた。そして、守屋君の良い所を沢山教えてもらったよ。 で、思ったんだ。危ない所を助けてもらったのに、俺等って何やってたんだろって。」 「でさ、守屋と話をしてみようと思ったんだ。だけど、やっぱり、怖くってさ、皆も一緒に着いて来てもらったんだ。」 「そうか…どうだった?やっぱり、まだ怖いか?」 四方を囲んでおいて今更怖いなどとほざいてくれたら張り倒してやろうかとも思うが今まで、恐怖の化身として扱われて来たのだ。 自分が人に恐れを抱かせる存在なのか、人から受け入れられる存在なのかが非常に気になるところだった。 今は無遠慮に接してくれてはいるが一時の勢いだけなのではないのかという懸念だってある。 「俺、守屋君の事好きかも。面白いし、意外と可愛いし。」 「嬉しいけど、男相手に可愛いは無いだろ…」 「いや、実際、守屋って可愛いよな?しっかし、今まで勿体無い事したよなぁ」 良し悪しの、どちらとも予想外の反応に皆、一様に頷き守屋を受け入れる言葉を重ねた。その表情と声色に恐怖は微塵も無い。 「そうか…ありがとう。」 守屋は滅多に見せなくなってしまった16歳の少年相応の穏やかな笑顔と安堵の表情でクラスメイト達に感謝の言葉を述べた。 「いや、俺達こそ、ゴメン。守屋の事、色々と誤解していた。」 「無理も無い。正直、自分でもアレは無いと思っていたからな…」 謝罪の言葉を受けながらも、今更ながらもう少しマシな解決方法があったんじゃないのかと自らの行いに辟易するしか無かった。 「そういや、何でギア部に入ったんだ?確か停学明けた直後だったよな?」 「っあ~~~~!!お前、頭悪そうなのに、何で嫌なトコを突付くかな!?」 「あー、守屋、ひっでー!ひでーよー!!」 普段なら西行の何気無い質問に家業の繋がりで元々ギアに興味があったと答えるのだが、話の流れが流れだっただけに事の元凶となった友人の顔が嫌でも思い浮かんでしまい守屋は苦悶の表情で頭を抱えた。 「あ、成る程。霧坂さん絡み。」 「アイツ…家が目の前なんだ。で、停学明ける直前に勧誘して来たんだよ。ギアに興味は無いかって。」 「それから、霧坂は守屋の通い妻になったってわけか!」 「ド突くぞ、テメェ…」 「ひ、ひぃぃぃぃ!?こ、殺されるッ!?」 違法ギア戦と同等、もしくはそれ以上の殺気を放ちながらの恫喝を受け西行は軽く死を覚悟しながら悲鳴をあげる 「冗談だ。冗談。」 顔は笑っているが目は全然、笑っていない。からかうと面白いが調子に乗ると、手痛い報復が帰って来る。 西行は死を覚悟すると同時に殺されないラインを学習する事を心から誓った。 「ま、ウチは両親が滅多に家に居ないし、霧坂の小母さんに飯の面倒見てもらう事が多いのは確かだけどな。」 「ほー…それにしても俺、霧坂があんな性格だなんて全然知らなかったなぁ」 「確かに中学の時と比べたら別人だよね。」 「なんだ?中学の時はもっと無遠慮で、大雑把で、いい加減で厚かましい奴だったのか?」 そうか、アレで大人しくなった方なのか。中学の時はどれだけ滅茶苦茶な奴だったのかと守屋が苦笑いをしていると 夕凪と西行が神妙そうな顔付きで目配せをしており、笑いながら喋れる雰囲気で無い事に気付いた。 「その様子だと霧坂さん…守屋君に何も喋っていないみたいだね…」 「喋れないだろ…」 「何があったんだ?」 「一応…僕達から聞いたって霧坂さんには言わないでね。」 守屋が分かったと真面目な顔で返すと夕凪はおずおずと口を開いた。 「僕達は霧坂さんとは中学校からのクラスメイトなんだけど、今みたいに明るい子じゃ無かったんだ。 守屋君なら家業柄覚えているよね?4年前の神隠し事件の事。」 地球人は全員、出生登録の際、ID登録され統合地球政府の管理システムのデーターベースに登録され、その気になれば全人類の様子をリアルタイムで確認する事が出来る。例え、それが死体であったとしてもだ。 しかし、システムを総動員させても失踪した人々の痕跡を辿る事が出来なかったのである。 失踪する数秒前の足取りは掴めているのだが、その直後、まるで神隠しにでも遭ったかのように存在が消えて無くなっているのだ。 尚、被害者はただ一人として遺体どころか遺品の一つさえも見つかっていない。 「ああ…当時、よく親父が愚痴っていたからな。」 「その神隠し事件なんだけど、霧坂さんの家族…お兄さんも被害者の一人なんだ。」 統合歴329年9月17日 昨日の話を聞いて何と無く気が重い。別に守屋自身に問題があるわけでも無いし、何かが出来るわけでも無い。 無駄な思考。無駄な感傷。分かってはいるが気が付けば考えてしまう。左隣を見ても霧坂は居ない。今日も実行委員の仕事だ。 まさか例の失踪事件に霧坂の肉親が関わっていたとは思いも寄らず、これから如何接していけば良いのかと無駄な悩みを抱える。 通学路に校舎が視界に入ると守屋を見て驚く生徒が数名。普段は霧坂が居るせいで全く気付かなかったがよく見ると皆が皆 守屋に恐怖心を抱いているわけでは無いらしく、物珍しそうに眺めてくる生徒も居れば、知った事じゃないと校舎に急ぐ生徒も居る。 「外野がグダグダ言っていても仕方が無いな…」 守屋は苦笑いしながら溜息を一つ吐き、教室に入ると喧しい教室が一瞬静まり返り、喧しくなる。 守屋を見て固まる生徒に吊られて例の如く静まりかけたが、その静まりが教師の到着では無く守屋の到着だと気付き、西行率いるエロ軍団が大声で守屋を出迎えたからである。 そんな様子を驚いたように凝視する者も居れば、何事も無かったかのように雑談を再開する者も居る。 守屋は西行達と雑談しながら教師を待つ、この時間が普通の学生らしい時間に感じられて嬉しく思っていた。 ―そして、放課後 「やっぱ、ウチのクラスで運動神経が良いのって守屋君よね。さて、何処に組み込むべきか…リレーは陸上部で編成するし…」 「やっぱ、守屋って強いし、騎馬戦が良いんじゃん?敵をばっさばっさと薙ぎ倒して行くんだ。真・守屋無双って感じに。」 「騎馬戦ってハチマキを取れば良いんだろ?薙ぎ倒すのは色々と不味いだろ…二度も停学食らう気は無いぞ。」 「肝心な守屋君は何か希望は?」 「そうだな…あ、これは俺向きだな。」 「何々?」 休憩時間を挟む度、西行や夕凪達が守屋の席に集まり下らない話でも盛り上がり、ゲラゲラと馬鹿みたいに笑い声をあげる様を見て興味を持たない筈が無く一人、また一人と守屋の元を訪れ馬鹿話に花を咲かせ、気が付いた時にはクラスの一員として打ち解けていた。 そして、昼休みと放課後になっても守屋が突然姿を消すという事が無かった為、霧坂も機嫌を損なう事無く、誰一人欠かす事無く種目決めが始まったのである。 この日の守屋は常に笑顔の絶えなかったが、半分は作り笑いだ。 漸く、打ち解けられて嬉しく思うが、自分の事ばかりで喜んで笑ってもいられないと思っているのも、また事実だ。 ライセンスの無いチンピラどもに当然の様にスポーツギアやビーム兵器が出回っている事も決着が付いていない。 4年前の大量失踪事件の事も― 当然ではあるが、一個人でしか無い自分に出来る事と言えば、目に付いた奴を叩き潰すくらいで 抜本的な解決となると如何する事も出来ない事も自覚している。 だからこそ、砕牙州に残り軍の任務を遂行中の父親と数ヶ月ぶりの再開を決意した。 決意すると同時に己の無力さに辟易した。 自分がやろうとしている事は、ただのおねだりに過ぎないのだから。 (自分の無力さと思い上がりに吐き気がする。) (今度は、何を悩んでいるんだか…) 僅か四ヶ月程度の付き合いでしか無いが、この二ヶ月は殆ど毎日 常時、顔を付き合わせていただけに守屋の微細な表情の変化にも気付くようになり、此処数日は特に作り笑い…と言うよりも、喜怒哀楽全てが作り物のように感じていた。 だが、その悩みのタネが他でも無い自分の事だとは気付く由も無かった。 ↓ 感想をどうぞ(クリックすると開きます) +... 名前
https://w.atwiki.jp/gow3wiki/pages/48.html
Act 3-1 解読不能 リーパーはタレットを使用してささっと片付けること 時たま登って来る敵がいるので後ろから攻撃されて死なないよう注意 なお、このChapterは必ずしも格納庫前まで侵入されるわけではなく 特定の敵が途中の門までたどり着くのを阻止できればクリアになる。 2つめの門前で最後に沸くモーラーバラック+グラインダーを全て ゲートにたどり着く前に倒しきると第2ゲート防衛成功となる(全難易度共通)。 バーニーのアナウンスの通り、モーラー&グラインダーにはワンショットが極めて有効。 上手く狙い射線上に複数体捉える事が出来ればPリロでシールドごと撃ち抜きトリプルキルを決めることも可能。 これを狙う場合第2ゲート下段の向かって左側に配置されているワンショット一つだけでは 弾が足りない場合があるので、第一ゲート中央に配置されている物を持っていくとより確実。 シージビーストに第一ゲートが突破される際に予めワンショットを 拾った状態で第1ゲート向かって左側に移動している必要がある。 また、第2ゲートの広場中央の上方には大量のガスボンベの乗った板が吊されていて これを撃つと落下・起爆炎上し敵を倒すのに役立てることが出来る。 余談だがストーリー上ドーンハンマーが調整されていないので使えないというセリフがあるものの Act2の最後からドーンハンマーを持ち込めば普通に使用できる事が分かる 持ち込んだからといって特段有利になる訳ではないが・・・ インセイン対処法 ちょっと頭を出すだけで集中砲火を浴びて即死するような敵の多さなので マルチャーなどの重火器は咄嗟に逃げられないためあまりオススメ出来ない 登ってくる敵は場所が決まっているので事前にグレネードを仕掛けてもいいし、 間に合うようならフックを殴って落としてもいい このActでは、基本的にプレーヤーが頑張らなくても進行する。(おそらく死んだ敵の数で進行する) そのため、クリアだけを考えるのであれば、安全なところでじっとしているのも手。 なお、第2ゲートのグラインダー+モーラーが出る場面で、ごくまれに左側から出現するグラインダーが 出現直後から左に移動し、そのまま画面上に出てこなくなる場合がある。 そうなった場合はブームショットもしくはグレネードをグレネード出現ポイント付近に撃ちこめば 画面外に出たグラインダーをキルできることもあるが、あまりに奥へ行った場合は爆風が届かないため キルすることができなくなる。 その場合は約10分間放置すればいつの間にかキル表示がでるが、セーブポイントをロードしたほうが早い。 Act 3-2 救出 ドーンハンマーのレーザーが照射され始めてから一定時間以内に 砦の敷地内に辿り着けないと強制ゲームオーバーになる。 下で救助する場合はベルセルク出現後は周囲の敵に注意しつつ急いで門へ向かおう。 上から援護射撃する場合はワンショットでブーマー、ドラッジ等強力な敵を優先的に倒し ベルセルクが出る前あたりになったら準備して右奥へ移動し、 門の前にいるランベントをすみやかに排除すると救助側がスムーズに砦内へ移動出来る。 尚、援護側はここでロングショットを拾えるだけ拾っておくと後のランベントベルセルク戦が楽になる。 ランベントベルセルク戦はとにかく避けるタイミングを体で覚えるしかない イミュルシオンを撒き散らすようになったら、折り返すように何度も平行に走らせると囲まれない。 また、できるだけ長距離走らせることで、攻撃可能な時間を長く確保することが出来る。 ベルセルクの走るルートを把握し、逃げるスペースをきちんと確保することが重要。 ここまでの流れでロングショットやトルクボウなど一撃が強力な 武器を温存してくるとぐっと戦闘が楽になるので可能ならば試してみよう。 上手く使えるならばランサーよりもハンマーバーストの方が 弱点を狙いやすく連射、Pリロで短時間に大きなダメージを与えることが出来る。 ショットガンの類やグレ刺しは突進や漏れ出すイミュルシオンにやられる可能性が高いのでお勧めしない。 インセイン対処法 「砦の上から援護する」のほうが、圧倒的に難易度が低い。 敵はランベントドローン数体が出現するのみでワンショットとロングショット等が備え付けになっている。“援護”のノルマもない もう一方のルートでは、強いランベントに囲まれ、ベルセルクも同時に襲ってくるので難易度が非常に高い。 ランベントベルセルク戦 2フェーズに分かれており、イミュルシオンを垂れ流しはじめたら第2フェーズの始まり。チェックポイントが入る。 2フレーズからが本番 Act2-6からドーンハンマーを持ってきても通用しない。(第1フェーズで使ったら、すぐに第2フェーズに切り替わったような気がするので要検証。第2フェーズは完全に無効になる) 突進の際に、胸が黄色くなるのでそこを狙う。 地道に撃っていれば倒せる。 地面のイミュルシオンに触れたら即死なので囲まれないよう誘導することが大事 気付いたらイミュルシオンに囲まれて八方塞がりという事にならないように なお多人数プレイの場合アーケードでプレイすればベルセルク戦がかなり楽になる Act 3-3 疾走 車両に乗り、タレットを使い障害物を排除していくステージ。 1Wave~前半リーパーが襲ってきて、後半はパイプ3本を破壊 2Wave~コープサー中が出てくる。コープサー大も登場するがたいしたことない。 3Wave~ローカスト軍団。最後にブルマックが出てくるが、撃ってくるミサイルを迎撃していればいいだけ。 Act 3-4 ゴーストタウン ランベント人は殴り1発で倒せるほど弱いが、複数に同時に攻撃されるときつい。 インセイン対処法 ランベント人の対処法としては、仲間よりも後ろに下がって惹きつけさせる。たまにこちらに来る敵は殴り又はランサーで対処。 囲まれるように襲われるシーンでは、狭い1本道に入りランサーで対処する。 市役所から出てからがキツイ。 市役所で襲われてからの場面は、多少時間がかかっても安全に行きたいのなら 武器部屋に引きこもっていれば大半のランベント人間は外にいる味方に群がるので対処がしやすくなる、 (ただし運が悪いと一気に三人ダウンして全てこっちに向かってくる事も) その際、ショットガンではなく、ランサーで対処する。 ランサーで撃つとランベント人は立ち止まるので、心に余裕ができる。 広場などで戦う場合も出来るだけ狭い入り口を確保するようにして戦うのがいい レトロランサーでの突撃が案外使いやすい Act 3-5 固い絆 最後の乱戦が比較的きつめ ある程度前方のローカストを倒すと正面と右側からフックをかけてドローンがよじ登ってくるので注意。 それらをある程度始末すると、後ろの方からランベント人間が押し寄せてくる。 更にランベント人を一定数倒すと、ストークが2本生えてくてランベントドローン&ドラッジを生む。 ストークのコブを全て壊すと3本目が生えるがその時点で生き残っていればクリアとなりムービーに移行する。 インセイン対処法 多人数プレイの場合アーケードでプレイすると楽。ソロでもそこまで難しくない。 最初のローカスト戦は適当でOK。自分が頑張らなくても仲間が倒してくれる。ブームショットには要注意。 ローカスト戦後半は登ってくるローカストを落とす作業に専念する。 自分のいる高台の、洞窟に向かって左側の前から2番目のカバーポジションにカバーすると比較的安定する。 ランベント人間は上記のカバーポジションから出来るだけ接近前に倒すこと。 接近を許しカバーから離れるとその他の敵の銃弾にも晒されあっという間に死亡してしまう。 ストークが出現したら出現する敵に注意しつつコブを潰すことを優先する。
https://w.atwiki.jp/moecc/pages/1187.html
期間限定ガチャの Mechanical Gears で入手出来るコスチューム一覧です。 ◆ガチャ一覧 に戻る ◆アイテム数 ノーマル レ ア 贈り物 合 計 24 16 5 45 ◆確率 ノーマル レア 通常 910/1000 90/1000 3倍 730/1000 270/1000 5倍 550/1000 450/1000 青色はレアアイテム、赤色はサラリの贈り物限定アイテムです。赤文字はサラリの贈り物でも入手可能です。 ◆ガチャアイテム一覧 アイテム 画像 アイテム 画像 頭 ヘリカルガイトリコーン ブラウン 頭 ヘリカルギアトリコーン レッド 頭 ヘリカルギアトリコーン ブラック 頭 ヘリカルギアトリコーン グリーン 背 絡繰り羽 金 背 絡繰り羽 銅 背 絡繰り羽 鋼 背 絡繰り羽 銀 服 ギアメカニック オレンジ 服 ギアメカニック パープル 服 ギアメカニック ブルー 服 ギアメカニック レッド 服 ギアメカニック ブラック 服 ギアメカニック ホワイト 服 ギアメカニック グリーン 服 ギアメカニック ブラウン 服 機巧少女 赤 服 機巧少女 青 服 機巧少女 黒 服 機巧少女 碧 服 魔鋼技師 赤 服 魔鋼技師 緑 服 魔鋼技師 黄 服 魔鋼技師 青 頭 機巧グラス 赤 頭 機巧グラス 緑 頭 機巧グラス 黄 頭 機巧グラス 青 背 ヘリカルギアウィング ゴールド 背 ヘリカルギアウィング アロイ 背 ヘリカルギアウィング パール 背 ヘリカルギアウィング シルバー 背 ヘリカルギアウィング ブラス 背 ヘリカルギアウィング ブロンズ 背 ヘリカルギアウィング オブシディオン 背 ヘリカルギアウィング オニキス 服 軌跡翔ける者 蒼穹 服 軌跡翔ける者 紅蓮 服 軌跡翔ける者 漆黒 服 軌跡翔ける者 松葉 壁 時の狭間 白銀 壁 時の狭間 黄金 壁 時の狭間 紫電 壁 時の狭間 黒鋼 服 スチームアドベンチャラー アイテム 画像 アイテム 画像 ◆サラリの贈り物 (抜き出し) 《その他の景品》 時の狭間白銀 時の狭間黄金 時の狭間紫電 時の狭間黒鋼 スチームアドベンチャラー 0000000000 0000000000 0000000000 0000000000 0000000000 ▲ページTOPへ
https://w.atwiki.jp/sousakurobo/pages/611.html
試合開始と同時に一振りばかりの剣戟を切り結び、立て続けに膝蹴りを叩き込む。 自らの斬撃の反動、互いの打撃の反発力に沿って距離を取り、中距離兵装を揃って構える。 リヴァーツの両手首のカバーがスライドし、四本のクナイが陽光を反射し鈍い輝きを放ち アイリスの左腕のシールドに収納されたチャクラムが火花を散らしながら高速回転を始める。 矢神は斬馬刀を愛機の真上に投げ、空いた両腕の指にクナイを挟み、上半身を逸らし 勢い良く上体を跳ね戻すと同時にアイリスの両肩の関節に投擲する。 高速で飛来するクナイの軌道は愚直なまでに馬鹿正直な直線攻撃。 確かに目で追うので精一杯だが、真っ直ぐに飛ぶだけの攻撃など脅威になどなり得ない。 (第一撃で両肩の関節を狙い…) 守屋は放たれたクナイの軌道を見切ると同時に左腕を振るい、チャクラムを開放する。 勢い良く放たれたチャクラムは、蛇がのた打ち回るかの様な変則的な軌道を描きながら 四本のクナイを纏めて叩き落し、リヴァーツの首を狙うが、新たに放たれた四本のクナイに 立て続けに刺し貫かれ四散し、ハラハラと宙を舞う。 (第二撃でチャクラムを破壊し…) そして、チャクラムの残骸の隙間を潜り抜け、更に四本のクナイがアイリスに殺到する。 「チャクラムシールドパージ!」 それを見越していた守屋は動揺一つせずに役目を終えた盾を切り離し、地に落ちる前に 左腕で掴み取り、飛来するクナイ目掛けて投げ飛ばし、四本全てを無力化する。 此方もチャクラムを失ったが、リヴァーツの飛び道具を全て使わせる事に成功しただけで充分だ。 だが、矢神はそれを意に介する事無く円を描きながら落下して来た斬馬刀を受け止め 宙を舞うチャクラムシールドを一刀両断に叩き割り守屋の元へ猛然と肉迫する。 (間髪置かずの第三撃からの斬撃!大丈夫だ…やれる!) 此処までのやり取りは、ただの前置きだ。クナイの対応だけに全力を傾けていたわけでは無い。 守屋は、いつ矢神が剣戟戦闘に入って来ても良い様に注意を傾けていた。 内心で心身ともに自分が落ち着いている事を再確認し、振り落とされる斬馬刀に刃を合わせる。 剛撃を受け流し、身を翻しながらリヴァーツの首筋に渾身を込めた一撃を振り落とすが 矢神は斬馬刀を片手に持ち替え、空いた右腕でバックラーブレードの刃腹に裏拳を叩き込み 斬撃の軌道を逸らし、勢いの落ちた斬撃を肩の装甲で受け止める。 更に、矢神は守屋に驚く暇も与えず、空いた左腕一本で斬馬刀を操り アイリスの腰部目掛けて掬い上げるような重い刺突を繰り出す。 防御から攻撃への斬り返しの速さに、守屋は一瞬ばかり反応が遅れる。 しかし、リヴァーツの剣は両腕で扱う事を前提に設計されており、片腕での攻撃は鈍重。 それ故に守屋の技量でも視認してからでも、回避が充分に間に合う程度の剣速しか無い。 (問題は…剣速が遅くても、被弾が即敗北に繋がるって事か…) 剣速自体が遅くとも斬馬刀が持つ質量ならば、致命的なダメージを負う事になる。 守屋は地を転がりながら刺突を避け、距離を取り剣を構え直し、矢神の追撃に備える。 「綺麗に真っ二つ…やっぱり、リヴァーツの斬撃を受け止めるのは不可能か。」 偶然、真っ二つにされ地面に晒されたチャクラムシールドが守屋の視界に映った。 綺麗な切り口を見て、腹が底冷えする思いをしながら改めて、リヴァーツを視界に収める。 攻めあぐねているのは事実だが、愛機の衝撃緩和剤の残量には充分な余裕がある。 それに大きなダメージは未だ受けておらず、五体満足。自身も愛機もまだまだ戦える。 (そうだ…俺もジョーカーもまだ戦える。最強を相手に戦えているんだ…俺は!) 幾度と無く無粋な横槍が入り、最強への挑戦を阻まれた憤りも忘れて只管、前に出る。 「漸く、巡りに巡った俺達の戦い!ニヤケ面しながら戦ってんじゃねぇぞッ!!」 斬馬刀を両の腕で握り締め、八双の構えから神速で叩き落される斬馬刀の斬撃を 体を一回転させ遠心力と重さを伴う回し蹴りで持って迎撃し、更に前へと突き進む。 「なんで、バレてるんだよッ!!」 間合いを詰めつつ、斬馬刀の間合いを制圧し上半身のバネを漲らせ弓の様に引き絞り… 超神速の刺突を以って狙うはただ一つ!矢神玲の!リヴァーツの!最強の首を討ち取る! 「お前が単純だからに決まってるだうがッ!!」 目にも止まらぬ刺突。だが、矢神玲という最強の牙城を切り崩すには遠く及ばない。 矢神は斬撃の予測も視認もせず、経験と生まれ持った勘のみを頼りに左腕を閃かせる。 (これは不味いか?) 一瞬、守屋の脳が弱気な思考に支配されかけるが、既に攻撃は放たれている。 ならば、強者に屈しろと囁く脆弱な思考諸共、その首を刺し貫いてしまえば良い。 「俺が単純って言うよりも、矢神サンが出鱈目なんだッ!!」 自らを奮い立たせ咆哮と共に渾身の刺突を穿つが、僅か一瞬とは言え迷いを持った時点で 矢神に付け入る隙を与えた様なものだ。首筋に吸い込まれようとしているバックラーブレードを 難も無く掴み取り、一息で容易く握り潰す。 「ッ!?」 その恐るべき怪力を目の当たりにして守屋は思わず息を呑むが、何ら不思議な事では無い。 通常のギアよりも二倍以上の骨格パーツを採用する事で、搭乗者の動きをより忠実に再現し 搭乗者の技量次第ではカタログスペックを遥かに凌駕する性能を引き出す事が出来る。 その上、徹底的に一撃必殺に拘った専用の斬馬刀は競技兵装中、最大の質量と重量を誇る。 だが、それ以上にリヴァーツを最強のギアたらしめている要素はもっと単純な事だ。 刃渡り8mの巨大な斬馬刀を鋭敏且つ強力、自由自在に操る事が出来る出力。 自らの手から決して斬馬刀を取りこぼす事が無いようにと、備えられた途方も無く馬鹿げた握力。 その力はギアの装甲、盾、刃であっても掴める物であれば容易く握り潰す事が出来てしまう。 武器どころか、ギア本体が悪ふざけと悪乗りの極みとも言うべき設計思想なのだ。 「何て出鱈目な…だが、このまま引き下がれるかッ!」 守屋はブレードの破片を撒き散らしながら、正拳突きを叩き込む。 守屋の拳がリヴァーツの頭部を叩き潰すよりも、矢神の蹴りがアイリスの腹部を強打する方が早い。 必死に踏ん張り堪えるが、地面を両の足で削りながら後方へと吹き飛ばされ、斬馬刀の間合いになる。 (嫌な感じに追い込まれているな…) だが、リヴァーツとて大会規定に則って設計されたスポーツギアの一機に過ぎず 決戦能力を徹底的に特化させたというだけで、絶対無敵とは言い難く、弱点も多い。 そもそも、安価で安全確実に、より人間的な動きを再現する事を念頭に設計されており 次世代型スポーツギアの存在とも言える機体で試作機としての意味合いが非常に強く リヴァーツは無敵・最強よりも失敗作、欠陥品という形容詞の方が似合っている。 例えば、必要以上に人間的な動きを再現する事に拘り、骨格のパーツを二倍にした結果 小さな損傷が毒の様に全身に広がり、些細な事で機能不全を起こす事。 骨格のパーツが二倍以上に増えているのにも関わらず、平均的なギアの製造コストに 無理矢理合わせる為、簡易大量生産が可能な粗悪なパーツに頼らざるを得ない。 これ等の問題を解決する為に大出力のジェネレーターと専用の斬馬刀を持たせ 必要以上に執拗且つ悪質なまでに決戦能力に特化させた事により、却って自らの攻撃の反動で 対戦相手どころか自身の身まで傷付け、先に挙げた機能不全と合わせて長期の試合に 耐え得るだけの頑強さを持たせる事が出来ず、攻撃力が高いだけの欠陥機でしか無い。 だが、選手の動きを忠実に再現し、カタログスペックを凌駕する性能を引き出す事が出来る骨格。 一撃必殺の破壊力を誇る斬馬刀。そして、優れた身体能力を誇る紅眼。 三つの要素が絡み合い、矢神玲とリヴァーツを難攻不落にして、最強の剣聖たらしめており まるで、リヴァーツが矢神玲だけの為に設計されたとしか思えない程、絶妙な相性を誇っている。 とは言え、短所を無理矢理、長所で打ち消そうとして失敗した欠陥機でしか無い。 それに性能を際限無く引き出す事が出来る性質を持っていようと物質その物の強度や 耐久性を引き上げる事は不可能だ。小さなダメージでも良いから与えさえすれば勝機もある。 (脆弱な防御性能と稼働時間の短さに付け入る…俺に与えられた勝機など…) 小さな損傷が毒のように全身に回るのを待つか、回避に専念しリヴァーツが消耗したところで 攻撃に転じ、一気に攻め落とす。今の守屋が矢神を打倒し得る手段など精々、この二つだ。 だが、現時点でリヴァーツに小さな損傷の一つすら与える事が出来ておらず 寧ろ、攻撃を交わす度にアイリス・ジョーカーの損傷がじわじわと広がっている。 如何にリヴァーツの稼働時間が短いとは言え、それを補う為の一撃必殺の決戦能力だ。 リヴァーツが消耗するまで守屋が矢神の猛攻を凌ぎ切るのは余りにも現実味が無い。 それに地区大会の違法ギア襲撃事件を思い返せば分かるように、矢神程の凄腕ならば 一撃必殺の性質を保持しつつ、機体の負担を最小限に押し留め、ハンデを覆す事など造作も無い。 これでは妄想と大差が無く、非現実的だと守屋は矢神の自滅を諦める。 仮に実現可能だとしても、その様な手段を用いて手にした勝利に何程の価値があるというのか? 矢神玲という最強の壁を乗り越え、対等のギア乗りとして立つには、ただ勝てば良いというものでは無い。 策を弄せず、真正面から、ぶつかった上で討ち果たさなければ、それは対等では無い。 では、無力な挑戦者、守屋一刀が矢神玲という最強の牙城を如何切り崩せば良いのか? (考えろ…相手は同じ人間と、人間が作った機械。何か他にも弱点がある筈…) 「ゴチャゴチャと考えている暇があるなら、一撃でも多く打ち込んで来い!!」 悉く、攻撃を無効化された上に蹴り飛ばされた挙句、矢神の間合いに身を晒してしまい 構え直しながら刹那の瞬間に矢神の攻略法を模索する為に思考を張り巡らせるが 一秒にも満たない思考でさえ、長考が過ぎると矢神が業を煮やすには充分過ぎた。 獣の唸り声の様な轟音を放ちながら薙ぎ払われる斬撃に慌てて、身を屈めながらやり過し 地を切裂きながらリヴァーツの頭部、正確には顎目掛けて鋼の豪腕を振り上げる。 だが、矢神は避けようとするどころか、アイリス・ジョーカーの拳に自らの頭部を叩き付ける。 「なッ!?」 頭部を失えば失格。その上、頭部の強度は全ギア共通で造り自体はかなり脆い。 死守すべき筈の頭部を矢神自らが差し出した事に守屋は驚きのあまり、その身を硬直させる。 「チッ…一発でも多く打ち込めってんだろうがッ!!」 斬馬刀を逆手に持ち替え、地を削りながら柄尻でアイリスの胸部を殴り付け、打ち上げる。 宙に飛ばされ、穿たれた胸部から装甲片をばら撒きながら地に――落ちるよりも リヴァーツが斬馬刀の刃腹でアイリス・ジョーカーを弾き飛ばし、地に叩き付ける方が早い。 斬られたわけでは無いが、無防備の状態で打ちのめされ、地を転がり大の字になって倒れ込む。 「立てよ。大して効いていねぇだろ?」 「クッ…やっぱり、強いな…」 守屋はよろめきながらアイリス・ジョーカーを立ち上がらせ、機体の損傷状況を確認する。 派手に叩き付けられた割に矢神が言った通り、機体その物に大したダメージは通っていない。 胸部の大穴も表面装甲で留まっており、見た目程の損傷は無く、試合続行に支障は無い。 「真正面から正々堂々ってお前の武士道精神みたいな戦い方。そんな勝負も嫌いじゃない。 だがな、お前の言う最強の壁ってのは理性で抑圧したような戦いで踏破出来る程度の壁なのか?」 「それは…」 「俺を打ち倒したければ獣の様に!我武者羅に!あらゆる手段で!全力でかかって来いッ!!」 矢神は斬馬刀の切先をアイリスに突き付け、砂塵を巻き上げ、地を蹂躙しながら猛然と肉迫する。 守屋は迫り来るリヴァーツを呆然と眺め、矢神の言葉を反芻した。 余りにも綺麗過ぎる戦い方で遊戯宛らの中途半端な闘気が込められた拳打と剣戟の応酬。 矢神玲という最強の牙城に挑む権利が手に入っただけでしかないのに、この浮かれ様。 圧倒的な実力差を前に思考を張り巡らせ、全力を出した程度で埋められるものでは無い。 これでは目の前の最強が呆れ果て、業を煮やすのも無理は無い。 ならば、如何戦えば打倒し得るのか? 「…取るべき行動は見えた。」 矢神の罵倒や挑発にも似た激励を受けて、守屋の意識が漸く、切り替わる。 愚かな上に無様な戦いをしてしまったものだと自嘲しながら迫り来るリヴァーツを視界に捉える。 「力でも思考でも駄目ならば、火中に我が身を曝し、限界を越えるまでだッ! ―来い、最強!今日、この時、この場所を以って、その首を貰い受けるッ!」 守屋は拳を握り直し、矢神を迎え撃たんと足に根が張ったかのように地を踏み締める。 「全く…追い込んでやらねぇと本気の一つも出せねぇのかよ…」 矢神は仕方の無い奴だと呆れながらも苦笑するが、それも僅か一瞬。 バカなら何時でも出来る。今はその時では無い。厳しい表情に切り替え、守屋の元へと疾走する。 確かに守屋が望むような延々と剣戟と打撃を交わす様な戦いも悪くは無いと思う気持ちはある。 だが、矢神は守屋に対して、そんな戦いを求めてはいないし、求めるつもりも無い。 ―何故か? 守屋は自分を最強と呼び、その最強に並び立った上で、その更に先を目指している。 口先だけの目標を掲げる奴は幾らでも居る。自分には無理だと諦め断念する奴も同様だ。 だが、守屋一刀は違う。下らない事で悩み、躓き、揺らぐ事も決して少なくは無い。 それでも、着実に歩を進め、最強の首を討ち取らんと気焔を立ち昇らせ 自分の首に手をかける所にまで遂に到着したのだ。 だからこそ、矢神は全力を持って対峙するに相応しい相手だと認めているのだ。 両者の間に立ちはだかる圧倒的な実力差など、何程のものでも無い。 それ故に、興行としての小奇麗な戦いを受け入れる事は断じて、有り得ない事だった。 『互いに』最強を目指し、欲さんとするのならば、泥臭く、貪欲に醜く奪い合うのが王道だ。 矢神は、それすらせずに手に入る最強に価値、意味、喜びを見出せないと考えている。 だから、守屋を同じステージに、同じ目線に、対等の立場に引き摺り上げたのだ。 そして、遂に守屋も決戦の意気込みを見せ腹を括った。最早、準備運動は終わりだ。 「次は…斬る。」 守屋を再び、間合いに捉えると同時に飛び上がり、上半身のバネを撓ませる。 上空からの刺突だが、切り上げ、振り落とし、薙ぎ払いへ派生可能な斬撃の結界。 そして、下手に後退すれば着地と同時に下半身の爆発的な瞬発力を用いた突進技が 全身を打ち砕かんと、襲い掛かるという寸法である。 無事にやり過すには、一息で間合いの外へと飛び退く以外の手段は無い。 (さあ…守屋、死力を尽くして限界を越えてみせろ!) 守屋は自ら矢神の間合いに踏み込み、着地を待たずにリヴァーツを迎撃する為に跳躍する。 アイリスと斬馬刀がすれ違うと同時に矢神は眉間に皺を寄せ、目尻を吊り上げ、目を細める。 「バラバラになりなッ!!」 矢神はリヴァーツを旋回させ、アイリスの上半身と下半身を切断せんと斬馬刀を振り抜く。 鋼が鋼を蹂躙する鈍い衝突音と重い衝撃がリヴァーツのコクピットに反響する。 (いや、いつもより重い…) 刹那、アイリス・ジョーカーを捉えた斬馬刀がほんの一瞬だけ大きく、押し返される。 ギアを叩き切った感触とは大きく異なる。守屋が何かを仕掛けたであろう事は考えるに容易い事だ。 「面白い…いや、地に脚を付けずに放った剣如きじゃ当然か?」 斬馬刀の刺突が薙ぎ払いに派生する寸前、守屋は斬馬刀を白刃取りの要領で掴み取り 薙ぎ払いの勢いに乗って上昇し、宙を舞いリヴァーツの上を取る。 「上空からの刺突から派生可能な変則的な剛撃見切ったッ!!」 「やっぱ、お前は考え無しに戦うのはやめた方が良さそうだな?」 今度は此方の番だとが吼えるが、矢神は慌てた風も無く地に着地すると同時に機体を反転させ 斬馬刀の柄尻を掴み、アイリス・ジョーカーを仰ぎ見ると同時に投擲する。 「そういった台詞は少しでも頭を使えるようになってから言えよッ!」 迫り来る斬馬刀を再び、白刃取りで掴み取り、落下しながら柄を両の腕で握り締め リヴァーツを大地に縫い止めんと上から急襲を仕掛ける。 「無茶苦茶しやがる…面白くなってきやがった!」 面白いが、機体を砕かれるのは必至。矢神はアイリスの落下予測地点から愛機を飛び退かせる。 轟音と共に舞い上がる砂煙を睥睨しながら、守屋からの攻撃を待ち構える。 「さあ、奪い取った太刀でどうやって戦うつもりだ?」 砂煙を切裂いて躍り出たアイリスの腕は何も手にしていない。 「あの大刀さえ封じる事さえ出来れば良かった。あんな物を振り回すつもりは無い。」 そう言って、アイリス・ジョーカーの着地点に目線を動かすと流石の矢神も唖然とする。 「おいおい…伝説の剣かよ…?」 斬馬刀は地中深くまで突き刺さり、柄だけが地表に顔を出していた。 「少なくとも、引き抜く暇を与えてやるつもりは無い。」 「本当に面白い奴だな…だが、得物一つ封じたってなァッ!!」 リヴァーツの腕がアイリスに襲い掛かる。見た目は華奢だが、スポーツギア随一の豪腕。 だが― 「徒手空拳の格闘戦で俺とジョーカーに敵うと思うなよッ!!」 迫り来るリヴァーツの拳を受け流し、手首を捉え、捻りあげる。 「チィィッ…」 此処に来て漸く、矢神の表情が翳りを見せた。 「その右腕を叩き落す!」 捻りあげられたリヴァーツの右腕の肘目掛けて拳を振り上げる。 回避は間に合わない。破砕音と共に右腕が宙を舞い、力無く地に落ち砂埃を舞い上げる。 まさかの大番狂わせに会場はどよめいた。あの矢神玲が苦戦する事など有り得るのかと。 観客の多くは矢神玲を倒せる選手など一人しか知らない。 そして、その選手は今大会決勝で矢神の手によって潰え、去年の雪辱を自らの手で果たすだろうと。 だが、その矢神がスポーツギアのとしては無名の守屋に深手を負わされ、追い込まれている。 リヴァーツが一撃必殺の決戦能力に秀でているのと同様にアイリス・ジョーカーは 徒手空拳の格闘戦に特化しており、武器を持ったギアを相手に素手で互角以上の 戦いが出来るように設計されており、多岐に渡る追加武装などメーカー都合の 利潤追求の為に開発された蛇足でしか無く、素手の状態こそが完成形なのだ。 故に素手同士の戦いにおいて、アイリス・ジョーカーの右に並ぶギアなど存在しない。 だと言うのにも関わらず、アイリス・ジョーカーはリヴァーツから飛び退き、地に片膝を着く。 何が起こっているのか分からないと誰もが呆気に取られ、固唾を呑む。 「流石に一筋縄ではいかんか…!」 「俺を倒すチャンスだったってのに、右腕取ったくらいで喜んでいるからだ。」 守屋がリヴァーツの右腕を砕く直前―矢神はアイリスの左肩を掴み粉砕した。 異変に気付いた時は既に手遅れ。大穴を穿たれた胸部にリヴァーツの蹴りが喰らい付く。 寸でのところで飛び退き、直撃だけは避ける事に成功したが胸部と左肩から紫電が走る。 垂れ下がり、千切れかかった左腕を肩口から引き抜き、立ち上がる。 (上半身の反応が鈍い…強さの底が見えない……だが……) 守屋はリヴァーツの手から得物が離れた瞬間、格闘戦で圧倒する事が出来ると考えていた。 だが、右腕と引換えに左腕を持っていかれた上に、上半身の機能不全のおまけ付き。 圧倒的に有利な格闘戦ですら大きな実力差を完全に埋めるには到らない。 だが―― 「あの矢神玲に有効なダメージを与えられたのは十分な進歩なんじゃないのか?」 「俺の首を取りに来たんじゃねぇのかよ?右腕取った程度で満足してんじゃねぇ!」 「誰が満足したって?俺は欲張りでね。右腕が取れるなら首が取れない道理は無い。 それに…今日、この時、この場所でその首を貰い受ける…そう宣言した筈だッ!!」 上半身に機能不全が起きたとは言え、まだ右腕がある。下半身も健在だ。 確かに矢神とリヴァーツが最強である事に疑い様は無い。寧ろ、その想いは強くなった。 だが、だからと言って完全無欠、絶対無敵では無い。奴の愛刀を封じた。右腕を滅した。 此方も大きな傷を負ったが最強の牙城を切り崩す為の着実な一手を取る事が出来たのだ。 「来い!防人の大刀!この首、易々と取らせると思うな!」 守屋は引き千切った左腕をリヴァーツに投擲。 矢神は事も無げに残った左腕で打ち払い、更に投擲されたバックラーを打ち落とす。 だが、その隙を突いて眼前に迫ったアイリスの左胴回し蹴りに対応する為の右腕を失っている。 アイリスの蹴りに叩き付けられながらも、蹴りの流れに乗って横っ飛びに攻撃を捌き、やり過ごす。 更に機体を一回転さえ、回し蹴りを放つが、アイリスの右腕に阻まれ脚を掴まれ押し倒される。 「矢神玲ッ!!その首貰ったッ!!」 守屋は倒れ込みながら、掌底をリヴァーツの頭部に叩き込む。 「守屋、よく頑張ったな。」 試合中の矢神の口からとは思えない程、柔らかな口調で守屋を慮る柔らかな声が届く。 確かに守屋は敵に檄を飛ばされながらも、最強を相手に一定以上の損傷を与える事に成功した。 ギアに乗って僅か半年。初出場ながらによくぞ『善戦した』と言える。 「だが、まだ俺の首はやれないようだ。また来年、挑戦しに来い。」 そう…守屋の放った掌底はリヴァーツの首を取るには紙一重の所で届いてはいなかった。 アイリスがリヴァーツの頭部を打ち砕くよりも早く、その手首を掴み取られ攻撃を阻まれていた。 リヴァーツの握力ならば、このままアイリスの右腕を握り潰し、その首に手をかけるのは容易い。 「まだだ…握り潰される前に押し潰すッ!!」 「面白い…根競べといこうかッ!!」 重量差でアイリス・ジョーカーが勝るとは言え、出力差ではリヴァーツが圧倒的に勝る。 異音を立てながら、アイリスの右腕が押し潰されていくが、矢神にも油断が許される状況では無い。 アイリスに押し潰された事で、この戦いで蓄積された疲労が今になって、その身を襲い、出力が低下していく。 その上、アイリスの右腕を掴む左腕に亀裂が走り、破砕音が鳴り響く。 並外れた力を持ち合わせていようと、リヴァーツの腕にアイリスの体躯を支え続けられる程の強度は無い。 握り潰されていくアイリスの右腕と、圧壊していくリヴァーツの左腕。 だが、この拮抗状態も長くは続かない。徐々にアイリスの右腕が押し上げられていく。 「まだ…守屋の首を圧し折る余力は残っているようだな…」 「クッ…これまでか……ッ!?」 ギアが崩れ落ち、蒼穹の空に破砕音が木霊し、この戦いの決着が付いた。 長々と続いた試合も終わってみると呆気の無いものだった。 準決勝戦第一試合―勝者、八坂高校代表、守屋一刀。 「お、俺の勝ち……だと?な、何がどうなっている!?」 「お前の目は節穴か?俺の首を持っていくどころか完全に叩き潰しているじゃないか。」 あまりにも意外な、予測外の結末に守屋は軽い錯乱状態に陥っていた。 事の真相はこうだ― アイリス・ジョーカーがリヴァーツの剛力に押し上げられ、右腕を握り潰される寸前。 守屋は為す術も無く、愛機の頭部を握り潰されるのを待つだけの状態にあった。 覚悟を決めた瞬間、突如として、リヴァーツが力を失ったのである。 機能不全という毒が全身に回り、機体が行動不能に陥ったわけでは無い。 リヴァーツの左腕が先に破砕したわけでも無く、守屋の最後の力に押し負けたわけでも無い。 終わってみると実に呆気の無いもので、真相を知ってしまうと実にバカバカしいものだった。 「そんな真相なら知りたく無かった…」 先にも述べた通り、リヴァーツは様々な欠陥を抱えた試作機だ。 それを矢神玲という選手の力と並外れた決戦能力で様々な欠陥を補い、最強の一角を担っている。 だが、優れた技術を持ち、機体に掛かる負担を限りなくゼロに近付ける事は出来てもゼロにはならない。 そして、一撃必殺の設計思想故に機体を稼動させる為の燃料に割かれるスペースは極僅か。 「ま、流石の俺でもガス欠ばっかりは如何にもならんなぁ。」 そして、互いに死力を尽くすという肝心な場面でエネルギー切れを起こし 戒めを解かれ、倒れ込んだアイリスに頭部を押し潰されたというわけだ。 「な、納得いかねぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええッ!!」 守屋の叫びが、アイリスの外部スピーカーを通じてスタジアム内に響き誰もが苦笑した。 「まあ、勝負ってのは最後まで何が起こるか分からないって事だな。」 矢神はロビーで守屋を宥めるが、未だに機嫌は悪く納得がいかないという顔をしている。 埒が明かないと守屋の肩に手を回し、無理矢理、胸元に引き寄せ、スクリーンパネルを指し示す。 そこには準決勝第二試合の様子が映し出されている。 「納得がいかねぇってのは分かるけどよ、アイツはそんな調子で勝てる相手じゃねぇぞ。」 「アイツ…?」 矢神が指差したのは黒と碧のコントラストで彩られた鋭角的なシルエットのスポーツギア。 「前大会の優勝者の月島静丸と、ティアマット。前回の決勝戦で俺を軽く捻り潰してくれた奴だ。」 「なっ…軽くっ!?」 矢神の言葉に守屋は目を見開き、スクリーンパネルに釘付けになる。 「まあ、今回の大会で前回のリベンジしてやるつもりだったんだが…お前に譲ってやんよ。 相手は真の最強。無様でも良い。必死こいて喰らい付いて、奴の首取って来い!」 矢神は守屋の背中を叩き、立ち上がらせニヤ付きながら、顎でその先を指し示す。 そちらに目を向けると複雑そうな表情で立ち竦む、霧坂と小野寺が佇んでいた。 「霧坂。それに小野寺先輩…」 「矢神の打倒。まずはよくやったと言っておこう。だがな……」 しかめっ面の小野寺に無表情の霧坂が続いた。 「流石に人目の多い所で男同士でイチャ付くのは……相当、気持ち悪いよ?」 一つのベンチに男二人してべったりと引っ付き、肩を抱き寄せられ試合観戦している姿は… 守屋は胃の内容物が逆流して来る様なムカつきを…要は吐きそうなほどの不快感を感じた。 それ以上に霧坂に無表情で気持ちが悪いと言われた事に心を深く抉られた。 「ああ…客観的に自分を省みたら恐ろしく気持ち悪い事に気付いたよ…」 「守屋君って、モテるのに女の影が無いのはそういう事だったんだね。失望したよ。」 「色々と誤解だ。その蔑むような目を止めろ。マジで止めろ。お願いします。」 初耳且つ、詳しく聞きたい情報が守屋の耳に飛び込むが、今はそれどころでは無い。 あの霧坂が軽口一つ叩かずに真顔で拒絶の言葉を吐いてくるのは堪えるものがある。 尤も、霧坂は霧坂で臍を噛み、自身の脇腹を抓り、必死に笑いを堪えているわけだが。 (実はからかっているだけだってバレたら、ぶん殴られるかも知れないわね。) 霧坂の新たな芸風。つまりは何時も通りだ。 「逢引の最中にすまんが、矢神を借りるぞ。」 二人の状況に気付いている霧坂とは対照的に、小野寺は怒りで肩を打ち震わせながら 霧坂に必死弁解する守屋を横目で流し見て、矢神の傍らに立ちシャツの裾を掴んだ。 「ッ!?……返さなくて結構です。」 守屋は一瞬、凝縮された殺気のような物を差し向けられた様な錯覚を覚えるが 矢神や小野寺に構っている場合では無いと短く返答し、誤解を解く事に躍起になっている。 「俺は物か?」 「物でも馬鹿でも男色でも何でも良いから、こっちに来い。」 守屋の弁解の言葉もネタ切れ寸前、霧坂の笑いの忍耐力も決壊寸前。 そんな折に小野寺は有無を言わさず矢神を引き摺り、矢神も気にした風も無く引き摺られ 二人して去って行くという異様な光景と組み合わせに守屋と霧坂は呆然と見送った。 『いつから、そんな仲に?』 小野寺が八坂高校の面子よりも先に、矢神と邂逅を遂げている事を知る者は居ない。 そして、小野寺は矢神を人気の無い所まで引き摺った所で漸く、手を離した。 「こんな人気の無い所まで引き摺って来て…愛の告白でもする気か?」 「あんな下手な芝居を打ってまでして、守屋に勝ちを譲って良かったのか?」 小野寺は矢神の軽口を無視して、試合中の行動や結果に疑問をぶつけた。 矢神はどうした物かと思案するが、小野寺が相手では隠し通せないと悟り腹の内を語る事にした。 「俺との試合で随分と腕を上げたが…まだまだ不十分だからな。 月島さんとやり合って上手くいけば、守屋は俺達と同じ領域に立てる。」 「はあ…やれやれ…大方、そんな所だろうとは思ってはいたよ。 だが、己の闘争本能を満たす為とは言え、随分と回りくどい事をする。」 矢神の腹の内を悟った小野寺は心底呆れたかのように肩を竦める。 守屋が自分と互角の戦いを出来るようにする為だけに下手な芝居を打ち、思い付く限り 自然な形で守屋を勝利させ、更なる強敵と戦わせて、その成長を促そうとしているのだ。 強い闘争本能を押さえ込むのでは無く、理性と知性で以って強く解き放つ事に対して 労力を惜しまない矢神の気質には、流石の小野寺でも呆れ果てるのは無理も無い。 「でも、良かったのか?月島静丸―君が彼と戦うチャンスは今日が最後なのだぞ?」 「良いも何も、もう譲っちまったしな。それに今日の強敵よりも明日の強敵ってな。 後、月島よりも守屋の方が面白い。俺とした事がガス欠に気付かないくらいだからな。」 「何だ?アレは芝居では無く素だったのか?」 小野寺は上目遣いで意地の悪そうな顔をして矢神に笑いかけるが 矢神は小野寺の皮肉に気付いた様子は全く無く言葉を続けた。 「本当はパワー負けして顔を握り潰される予定だったんだがなぁ…」 結果的には守屋に悟られる事無く、自然に敗北するという矢神の目論見は成功した。 だが、自らが招いた失態により其処に到る過程は少々、思惑から外れる物だった。 それが、エネルギー残量の確認漏れという未経験者ばりの失態を犯した事により 敗北してしまったのは少しばかり頂けない。これでは素で敗北したみたいだ。 「君に腹芸は向かん。何を如何すればリヴァーツがパワー負けするというのだ。」 小野寺は、心底あきれ返ったような表情で矢神を見つめた。 何処までいっても真っ直ぐな――大馬鹿者だと。 「さーて!いよいよ、決勝戦!守屋の奴ぶったまげるだろうなぁ!」 何時までも、悔やんでもいられない。矢神はわざと大きな声を出し小野寺の手を引く。 意気揚々と客席に戻ろうとするが小野寺は矢神の手を握り直し、その場に留まる。 「どうした?」 「一つだけ確認しておく…矢神。さっきのアレは冗談か?それとも本気か?」 矢神が小野寺の方へ顔だけ動かすと小野寺は真剣な表情で矢神を見つめる。 「さっきのアレ?どれの事だ?」 「男色か否か―解答次第では君に対する今後の態度を改めねばならん。」 今度は矢神が呆れる番だ。何故、そんなアホな事を真顔で問い詰められねばならんのだと。 「俺はノーマルだ。ホモでも無ければ、ロリコンでも無い。」 矢神は憮然とした表情と硬い声で返答し、半ば強引に小野寺の腕を引っ張り、歩みを再開した。 そして、二人が会場に戻るとティアマットの足元にアイリス・ジョーカーが片膝を付いていた。 「強過ぎる…勝機が見えない…」 矢神が予測していた通り、守屋は月島に一方的に追い込まれていた。 そして、余りにも異質過ぎる選手の力に翻弄され戸惑いを隠せないでいる。 「俺も通った道だ。強くなる為の鍵を掴み取るまでは負けてくれるなよ?」 これでは去年の焼き増しだと矢神は苦笑しながら呟く。 去年の州大会の決勝戦で矢神は月島との対戦で、一方的に叩きのめされ敗北を喫した。 だが、その屈辱的な敗北も無意味では無く、今の地位まで一気に上り詰める切欠を得る事が出来た。 だから、矢神は自分に出来て、守屋に出来ない道理は無いと考え今回の行動に到ったのだ。 しかし、最後まで最強の牙城を切り崩す事が出来なかった事に僅かながら後悔が滲む。 月島の連続優勝に待ったをかけ、名実共に最強にという願望が少なからずあったのだ。 「悔やむくらいなら、守屋に勝ちを譲らなければ良かったのでは無いのか?」 「表情だけで何処まで見透かすつもりなんだ?」 矢神が小野寺と知り合って、もう間も無く3ヶ月。 今月に入った辺りから小野寺は矢神の小さな仕草や表情の変化を見ただけで まるで心の声が聞こえているかのように思考に対する疑問や意見、解答を口にする。 その上、的中率100%、これには流石の矢神でも、些か怖気づいてしまう。 「矢神。いい加減に君が単純なだけなのだと気付いてくれ。」 若干、引き気味の矢神に対し、小野寺は得意気な顔をして挑発的に笑う。 知り合って僅か三ヶ月足らずだが、小野寺にとって矢神の思考など単純この上無い。 ほぼ毎日、行動を共にしていれば、何を考えているかなど手に取る様に分かる。 「君の脳は戦闘時以外は基本的に停止しているも同然だからな。 戦闘中でさえ無ければ、君の考えを読む程度ならば然程、難しくは無いよ。」 戦闘時の矢神の思考も読めるようになれば、三割程度の勝率も少しはマシになるのだがと 小野寺は内心で自嘲するがそれが出来れば苦労は無い。 矢神の頭は戦闘に供えて常時停止しているのだから。 「ああ、そうかい…」 矢神が憮然としていると視界の端から鋼が崩れ落ちる破砕音が鳴り響いた。 二人が思い出したかの様に目を向けると、頭部を失ったアイリスが膝から崩れ落ち、地に伏していた。 「クソッ!!やっと掴めたってのに、よりによって3年生かよ!!」 敗北はしたものの守屋の声にはしっかりとした覇気があり、月島に再戦を求め怒鳴り散らかしている。 八坂州、個人戦王者、岸田学園三年、月島静丸。彼に残された出番は年度末の全国大会のみ。 全国大会は総勢10名の選手が州代表選手として選抜され、州対抗戦として対戦が繰り広げられる。 州大会まではライバルだった選手達も全国大会では心強い味方に様変わりする。 つまり、守屋や矢神にとって、この決勝戦が月島と対戦する最後のチャンスだったというわけだ。 勝利を手にする切欠を手にしても、それを実行する機会は既に二人の手から零れ落ちている。 無念さのあまり守屋は幾度と吼え、その様子を見て矢神は満足気に笑う。 「矢神。君の目論見は上手くいったようだな。」 「月島さんと戦って守屋が強くなれるかは、賭けだったが…譲って正解だったな。 後は守屋が何処まで強くなれるか…来年の地区大会が楽しみってなもんだぜ。」 まるで守屋が強くなった上で、自分自身を打ち倒す事を望むような口振り。 最強の一角として名高い矢神だが、頂点である事より常に挑戦者である事を望んでいる。 小野寺は呆れる素振一つ隠さずに溜息を吐き、表彰式の開始を待った。 #back(left,text=一つ前に戻る) ↓ 感想をどうぞ(クリックすると開きます) #region #pcomment(reply) #endregion
https://w.atwiki.jp/masaopaku/pages/15.html
写真からパク http //asame.sakura.ne.jp/before/masaof09.html 個人ブログより http //malgdgdblog.blog24.fc2.com/ ファミリーコンピュータ 箱で検索1ページ目 http //www.amazon.co.jp/gp/customer-media/product-gallery/B0001PW6E2?ie=UTF8 index=1 「石田とあさくら」より 「外人 笑顔」で検索 http //toriton.blog2.fc2.com/blog-date-201004-54.html http //asame.sakura.ne.jp/before/masaof09.html ひまわりで検索 http //furukawa1961.hamazo.tv/e1355799.html http //www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium illust_id=26017123 アイーンで検索 http //www.asahi.com/showbiz/gallery/100702shimura/shimura015.html 月刊ヤングキング表紙より http //www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium illust_id=25825116 画像検索では個人ブログが引っかかり、ここがラレかと思われたが その記事は写真を転載していて、 実際のラレは小学館であることが発覚。http //www.webserai.jp/2010/02/post-12eb.html 月刊ヤングキング表紙より http //www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium illust_id=25825116 さくらで検索 http //www.nlcafe.hu/index.php?id=1057 fid=441 topicid=101802 step=3 page=85 bw=1 http //www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium illust_id=25268358 奈良 五重塔で検索1ページ目 http //www.1tabi.com/japan/post_123.html http //www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium illust_id=25268358 下地にした画像の消し忘れが残っている 「石田とあさくら」より トムクルーズで画像検索1ページ目 http //hw-p.com/male/t/to/tcruise/より 「石田とあさくら」より トムクルーズで検索 http //gensun.org/i/prop.movies.c.yimg.jp%2Fpict%2Fwiredimage%2F4d%2Feb%2Fw214480-view.jpg 「石田とあさくら」より イチローで画像検索2ページ目 http //msy738.blog75.fc2.com/blog-entry-589.html http //www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium illust_id=26295945 http //www.desktopwallpaperhd.net/background-beautiful-tiger-wallpapers-166330.html http //www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium illust_id=26295945 http //fireways.blogspot.jp/ http //www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium illust_id=21933897 http //girlic.jp/%E6%B0%B4%E6%A8%B9%E3%81%9F%E3%81%BE/%E6%B0%B4%E6%A8%B9%E3%81%9F%E3%81%BE-1/attachment/11305084570019 http //www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium illust_id=22798943 オロナミンCで検索 http //f.hatena.ne.jp/Kumappus/20080227102354 http //www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium illust_id=25324495 銭湯で検索 http //buhisoku.blog28.fc2.com/blog-entry-1999.html http //www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium illust_id=14538123 ガクトで検索1ページ目 http //blackma-n.com/archives/755 http //www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium illust_id=23110482 イモトで検索 http //izuru136.cocolog-nifty.com/iletter3/2009/07/24-27be.html http //www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium illust_id=15907893 (車種が違うとの指摘あり。上の写真は寝台特急「はやぶさ」だが絵は「さくら」?) http //busiko.sblo.jp/article/28668996.html http //www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium illust_id=24090825 シカで検索1ページ目 http //busiko.sblo.jp/article/28668996.html http //www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium illust_id=24090825 ピカチュウで検索1ページ目 http //www.smashbros.com/jp/characters/pikachu.html http //www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium illust_id=8915456 中井貴一で検索1ページ目 http //yudetama.jugem.jp/?eid=85 http //www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium illust_id=18835874 たんぽぽで検索1ページ目 http //plaza.rakuten.co.jp/aoikazura/3000/ http //www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium illust_id=24090825 荒木飛呂彦で検索1ページ目 http //matome.naver.jp/odai/2127960850744992301/2127967633145618503 http //www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium illust_id=21980846 ↓検証動画、クリック推奨 元画像アダルトサイトの為、google画像検索のページにリンクします。 https //www.google.co.jp/search?num=50 hl=ja safe=off sa=G q=%E5%A5%B3%E5%AD%90+%E9%AB%98%E7%94%9F+%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%BC%E3%83%AB+%E6%B0%B4%E7%9D%80 tbm=isch tbs=simg CAQSZRpjCxCo1NgEGgIIAQwLELCMpwgaPAo6CAESFJAFpwXcBdgE3QSZBdMElQXYBbAFGiB3ywdqM4WmdrgnCsDcpljG45mo73moWXnpBj2cZ6WFegwLEI6u_1ggaCgoICAESBPTmM1gM ei=rY6BUKeDF42iiAfXuYDQDg ved=0CCcQ2A4oAA biw=1280 bih=629
https://w.atwiki.jp/psp-2000/pages/11.html
検証動画へのリンクです 新旧PSPによる実証その5 PSP 英雄伝説 白き魔女 かるっP動作確認 空の軌跡FC
https://w.atwiki.jp/frontlineinformation/pages/1271.html
ここでは機体と武器の検証動画のみを紹介。(主に初心者の人向けの場所) 武器・機体の購入の判断材料になれば幸い。基本的な性能は本家Wikiかここの該当記事をチェック!! スペックはムック本を参照 武器 強襲 主武器 ボーダーブレイク電磁加速砲3種試射動画 【検証】電磁加速砲・紫電【個人演習】芸人じゃない人のBB【外伝4】 PSO好きによるボーダーブレイク 番外編1 STERシリーズ。簡単に言うとレールガンの実弾版といったところ。 new VOLT-RX試射 太陽の子第2弾 new 【戦場疾走!】S3()紳士のボーダーブレイク番外【ジェイナスの検証】 副武器 グレラン演習試し打ち 【市街地】ミサイルスロアー試し撃ち動画【個人演習】 補助武器 【リヒト】就職戦線の財布がブレイク!番外編5【メッサー】 「A1」槍の心得ボーダーブレイク 40本「ペネトレーター仕様確認演習」 【採掘島C】LM-ジリオス試し斬り動画【個人演習】 特殊武器 new ACマルチウェイⅡ試用 【ボーダーブレイク】マルチウェイ2出力を推定してみた 重火力 主武器 ボーダーブレイク 機関砲全種試射動画 注:双門機関砲・怒竜は支給前なのでありません ボーダーブレイク 恐竜さんが元気に吼える おまけ編 高反動ブレ検証 ボーダーブレイク 恐竜さんが元気に吼える おまけ編 低反動ブレ検証 上はケーファ45(セットボーナス有り)、下は頭:HG1 腕:修羅2での検証 ボーダーブレイク ヴルカンシリーズ試射動画 new 【検証動画】ヴルカン・ラヴァ【個人演習】 【検証】双門機関砲・怒竜【個人演習】芸人じゃない人のBB【外伝3】 【検証】ウィーゼル・コロナ【個人演習】芸人じゃない人のBB【外伝5】 コロナ検証:射撃補正 反動吸収三段階によるテスト ボーダーブレイク LSC-グローム3種試し撃ち ボーダーブレイク 続・LSC-グローム3種試し撃ち LSC-グロームシリーズ。ニュード属性の機関砲。γが重火主武器の最重量を更新、シュラゴンがさらに重くなったwニュード属性武器特有の反動の小ささが売りだが集弾率に難有り。ヴルカン同様OH!が無い。 副武器 エアバーストMLRS三種撃ち比べ サワード・スマイトを適当に撃ってみた 【プラカノ・ネオ】S5紳士のボーダーブレイク番外編13【まとめてみた】 new 【BB-検証】パワードシーカー【重・個人演習inブロア】 new プラカノUG試射 new チャージカノン三種試射 new チャージカノン検証してみた 溜め無しと1段目までの威力検証 補助武器 ボーダーブレイク アームパイク・ヘヴィパイク試用 特殊武器 ボーダーブレイク バリアユニットと浮遊機雷検証 【BB検証】バリアの疑問を色々調べた この動画はバリアの属性耐性(実弾・ニュード・爆発)を調べたものです。おまけも必見 new 【ボーダーブレイク】UMDシリーズ試し撃ち 戦い方を模索した動画がコレ 「UMD重火」の戦い方ってこんな感じ? 狙撃 主武器 【ボーダーブレイク】ブレイザー・アグニ買って試してみた これはひどい バトルライフルシリーズ。射撃補正A+だとノースコープでもほぼ真ん中に飛んでいくのでスコープは覗かなくてなくていい・・・?あれ、コレって狙撃銃だよね? 副武器 【ボーダーブレイク】レヴェラーの反動を比べてみた スティッキーボム 試し投げ レヴェラー・ブルート試射動画 補助武器 【高振動ブレード】猫耳ボーダーの気まぐれ日記:番外編【個人演習】 特殊武器 【検証】光学迷彩・耐久型【個人演習】芸人じゃない人のBB【外伝2】 【個人演習】マグネタイザーの試し投げ【ボーダーブレイク】 new 照準補正装置・試験型の簡単な検証 照準補正装置・耐久型の簡単な検証 支援 主武器 【ボーダーブレイク】LSG-ラドゥガ試し撃ち 【ボーダーブレイク】ラピッドネイル個人演習 【ボーダーブレイク】ハガード検証?(戦闘以外)【検証】 副武器 【ボーダーブレイク】ホバーマインを検証(適当)してみた【検証】 こちらは補足版→ 【ボーダーブレイク】ホバーマインの検証の補足【検証】 ホバーマインシリーズ。通称ルンバww(見た目から)ホバーといっておきながら水中を進む。そのまま流れて行き、やがてロージーになってゆくという不思議な生態を持つww new 【ボーダーブレイク】メガネのボーダー試射動画【N60デトネーター系】 補助武器 スナター買って見た 【ボーダーブレイク】スタナーKを検証(適当してみた【検証】 同人ゲーム屋のスーパースタナーK(個人演習編)【ボーダーブレイク】 これは・・・どう見ても・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・産廃ですね(・ω・)b new 軽量索敵センサー試用 特殊武器 【ボーダーブレイク】リペアショット 試し撃ちをしてみた【新武装】 バグは修正済み new 【ボーダーブレイク】リペアポストγを検証(適当)してみた【検証】 機体 エンフォーサのボーナスを検証してみた? 【ケーファ】ボーダーブレイク検証でキョドる!第1幕?【+榴弾砲】 ディスカスセットボーナス比較とヴルカン試射 【ボーダーブレイク】ネレイド買って検証してみた【憧憬番外】 【ver2.5】迅牙+スパークロッドⅡ再検証&スウォーム+各兵装新装備 【BORDER BREAK】ロージーLMに乗ってみるのデスヨー【検証動画】 アスラ VS フォーミュラ
https://w.atwiki.jp/gowbug/pages/49.html
Gears of War バグまとめWiki へようこそ 当Wikiは 主にGOWのマルチプレイヤー上のバグに関する情報を集めております。 新たなバグを発見した方は、お気軽にご編集ください。小ネタでも構いません。 他のプレイヤーの迷惑となるので、掲載してあるバグの実践はやめましょう。 2ch 箱○氏曰く、「興味の無い方はお引き取りください」。 関連リンク 2ch本スレ http //game11.2ch.net/test/read.cgi/famicom/1171159783/l50 playinghalotoday(英語) http //www.geocities.com/playinghalotoday/ Youtube http //www.youtube.com/ Wikiに関して分からないことは? @wiki ご利用ガイド よくある質問 @wikiへお問い合わせ
https://w.atwiki.jp/sousakurobo/pages/743.html
統合歴330年3月12日 荒れ果てた無人のギアスタジアムの中央で二体の鉄巨人が火花を散らしながら幾度と無く激しくぶつかり合う。 その名が示す通り全身を真紅に染め上げた流線型の高機動スポーツギア、スカーレット。 それを迎え撃つは太古の悪魔の名を冠し、深緑と黒の鋭角な形状のスポーツギア、ティアマット。 本来ならば出場種目が異なるため、決して同じフィールドに立つ事の無い二体の鉄巨人。 二振りの銃剣で肉迫する真紅に対し、悪魔は一振りのハルバードを構え真紅を睥睨した。 スポーツギアの競技用兵装として使用される長槍や大剣、大鎌などの長物は様々な仕掛けが施されており、爆発的な斬撃速度を持つブースト付きを始めとする見た目とは全く性質の異なる武装が多く存在している。 寧ろ、矢神玲の愛機リヴァーツの専用斬馬刀の様に重量を増やし、純粋な破壊力を高めた武器の方が珍しいと言える。 ティアマットが装備しているハルバードも多分に漏れず、多彩な仕掛けが施されている。 それはブースト付きの様に扱い易く、手軽に攻撃力と手数の向上が可能な実用的な仕掛けでは無く、扱い辛い上に実用性は皆無でどちらかと言えば、演出としての意味合いの方が強い。 だが、製造メーカーであるティアマット社はそんな事など微塵にも思っていない。 実用的且つ、効率的に対戦相手を撃滅し、どんな武器よりも観客を魅了する事が出来る最高の逸品であると考えている。 勿論、使いこなす事が出来ればの話だ。では、ティアマットを従える戦士、月島静丸はどうなのか? 加賀谷はスカーレットのブースターを巧みに操り急速接近したかと思えば、急制動をかけ緩慢な動きで宙を舞いながら正確な射撃をティアマットに浴びせ、距離を離す。 放物線の頂点に到達したかと思えば、目にも止まらぬ速さで地に降り立ち更に砲弾を放つ。 急加速で大地に降り立ち、衝撃を押し殺している今が接近のチャンスだと接近すれば、重量も重力も無いと言わんばかりに、風に流される羽毛の様にひらひらと後退していく。 だが、月島には焦りも無ければ、苛立ちも無い。 推進装置を持つスカーレット、それを持たないティアマットでは機動力の差で翻弄される事など戦う前から分かり切っていた事だ。 それに相手は団体戦において最強無敵無敗を誇る選手だ。容易く打倒出来ると思っていない。 (矢張り、手強い……な) 緩慢かと思えば鋭敏。近付いたと思えば遠退き、距離を離したかと思えば距離を詰められ斬撃が来たかと思えば射撃。 牽制射撃のタイミングで精密射撃。常に表裏一体の行動で裏を斯いたと思えばセオリー通りの行動に出る。 完全に加賀谷のペースに呑まれた月島は集中力を掻き乱され、攻めに転じるタイミングを挫かれ防戦一方に追い込まれている。 とは言え、加賀谷の術中に嵌っている事を自覚出来るだけの思考力、素直に感嘆の溜息を吐く程度の余裕が残されており、冷静に攻撃の機を伺う。 一見して流れは完全に加賀谷の方へと傾いているが、加賀谷もまた完全には攻め切れずにいた。 一貫性もリズムも無い機動でティアマットを引っ掻き回し、月島の集中力を乱してはいるものの、守屋や矢神を始めとする多くの選手達に辛酸を舐めさせたハルバードの正体を掴めず、深く切り込む事が出来ないでいた。 加賀谷が攻めあぐねていると、ティアマットは両手で構えていたハルバードを片手で構え直し、スカーレットに、その矛先を突き付けた。 「そろそろ、仕掛けるぞ……ウェポンスプレッド」 月島の音声を認識しハルバードが斧、剣、矢、槍、鎚等の九つの武器に分離し放射線状に飛び散り、スカーレットの死角を突くかのように頭上や背後から襲い掛かる。 「ッ……守屋を殺った攻撃か!!」 守屋の勝手に殺さないで下さいという突っ込みが外から聞こえるが、既に外部の声など意識の外だ。 螺旋を描きながら左右から飛来する二振りの斧に砲弾を叩き込んで軌道を逸らし、背後を狙う飛刃を振り向き様の斬撃で弾き飛ばすが、散弾の様に放たれた武装の数々は意思を持っているかの様に執拗に加賀谷を攻め立てる。 だが、一対一の戦いに慣れ過ぎている個人戦の選手と違い、団体戦の選手である加賀谷にとって四方八方から攻撃を受ける事など日常茶飯事で、それらの攻撃の対応など難しいものでは無い。 舞うように飛翔し上下から飛来する二本の短槍を切り払うと、ティアマットが短刀を逆手に持って無数の剣閃を放つが、加賀谷は斬撃の始点を右腕の銃剣で貫き、左腕に握った銃剣で短刀を握るティアマットの右手を撃ち抜く。 加賀谷はティアマットに対し格闘戦仕様ギアのアキレス腱とも言うべきマニピュレーターを、一つ奪い取った事に満足しながらも油断無く距離を取り銃剣を構え直した。 その直後、背後から鋭利な物で撫で斬りにされた様な微細な振動がコクピットに響き、加賀谷が反射的に機体を前進させると、モニターにダメージレポートが表示される。 背部メインブースターに中程度の損傷。推力30%低下―― 加賀谷はこれまでの経験から愛機を削り取った攻撃の正体を一瞬で看破する。 「この感覚と威力は……鋼線か!」 本来、正面から撃ち出された武器が上下左右から愛機に襲い掛かった時点で疑いを持つべきだったのだが、多方向からの一斉攻撃に慣れ過ぎていた事が逆に足かせとなり判断力を鈍らせてしまっていたのだ。 その結果、音も無く愛機を斬られて初めて、ティアマットの左腕に握られたハルバードの柄から九本の鋼線が蜘蛛の糸の様にフィールド上に張り巡らされていたことに気付いたのである。 「気付くのが早いな……大抵の相手ならば"糸"を使うまでも無く刃の弾頭に倒れ伏すのだがな」 ティアマットが左腕に持っている柄を振り回すと、スカーレットに弾き飛ばされた武装の数々が空中で、その軌道を変え再びスカーレットに襲い掛かる。 「団体戦では全周囲に気を配り、攻撃の気配を探らねばならんからな」 この程度の芸当は造作も無いとでも言いたげな声色で返すものの、攻撃を弾けば弾くほど鋼線は複雑に結び付き、結界は密度を増しスカーレットの動きを封じ込め、流石の加賀谷も焦燥の色を強める。 「打つ手無し……か」 「加賀谷、確かにお前は強い。だが、お前には守屋や矢神の様な我武者羅さ足りない」 だから勝てないんだと付け足し、月島は鋼線に繋がれた武器を猛スピードでティアマットの左腕に手繰り寄せ、その勢いに煽られた鋼線が無軌道な斬撃の嵐となり暴れ出す。 そして、スカーレットを中心に三つの砂柱が巻き上がり、地中で結界の支柱の役割を果たしていた小槌がスカーレットの脛から下を打ち飛ばし斬撃の嵐の中に叩き入れる。 「足掻きに足掻いて抜け出して見せろ。お前を慕う選手達なら此処で諦めたりはしないぞ」 「気軽に言ってくれる……!」 だが、後輩達の手前もある。全神経を集中し、鋼線による斬撃の軌道を頭の中に思い描く。 この嵐も全ての武器と鋼線がハルバードの元に戻る一瞬を凌ぎ切れば良いだけの事だ。 避け切れない攻撃を両脚やスラスター、肩の装甲等の次の攻撃に必要の無い部位を犠牲にして、嵐が止むのを必死に耐えようとするが、勢いも数も尋常では無い。 斬撃を受け流し続けるのにも限界があり、摩擦熱で刀身を斬り落とされ発射機構が爆発し、肩口から左腕が弾け飛び錐揉みしながら大地に落下する。 「これではまるで守屋だな……まあ良い。偶には頑張ってみるか」 右腕に残された銃剣を宙に放り投げ、大地に右腕を突き、残った衝撃緩和剤を噴射し、墜落と右腕の損壊を防ぐ。 ブースターを点火。急上昇し、弧を描きながら宙を舞う銃剣を握り締め、急降下しながらティアマットに猛追する。 「…捨て身のつもりか? 流石にそれは愚かでは無いのか?」 ティアマットは再び、ハルバードを片手で構えスカーレットを絡め取ろうと武器を炸裂させする。 「頭が良いんでな。これでも理詰めさ」 加賀谷の皮肉に月島の目が釣り上がる。 (この状況で……何か仕掛けるつもりか) 加賀谷は対戦中に虚勢を張る事も無ければ謙遜する事も無い。出来ると言えば出来るし、出来ないと言えば出来ない。そんな選手だった。 それを薄々と感じ取った月島は加賀谷の様子に強い警戒心を覚え、満身創痍の加賀谷に油断する事無く意識を集中し、迫り来るスカーレットを力強く見据える。 「余計な物は全て、削ぎ落とした……後は!!」 加賀谷はブーストレバーを一気に最大値に引き上げ、スカーレットの背中から装甲と同じ色の巨大な焔の翼を生やし、閃光と見紛う程のスピードでティアマットに突進する。 攻撃に不要な部位を全て切り落とし、低下した推力を補い、高高度からの落下速度を上乗せして、本来の能力を遥かに上回る機動力を右腕に乗せ 我が身が砕け散るのもお構いなしの一撃必殺の一閃に月島は舌を巻きつつ、大地を蹴り抜き正面からスカーレットを迎え撃つ。 だが、加賀谷はティアマットが振り落としたハルバードなど在って無いような物と言わんばかりに粉砕する。 それでも、月島は容易く首を渡して堪るかと、マニュピュレーターが欠損した右腕を盾にスカーレットの突撃を食い止める。 拮抗は一瞬。ティアマットの機体性能自体がそれ程、高くない事もありその勢いを押し留めるには遠く及ばず、加賀谷はティアマットの右腕ごと、その首を貫かんと力を込める。 「チッ……矢張り手強い……だが!!」 月島はティアマットの右腕が爆散すると同時に身を捩りながら、足元に転がったハルバードの残骸を蹴り上げ、左腕で握り締め、弧を描くようにスカーレットの頭部を跳ね飛ばし、大地へと叩き落す。 「紙一重……か」 加賀谷の繰り出した最後の一撃は紙一重の所でティアマットの頭部から逸れ、右肩を深々と貫いており、流石の月島も加賀谷の技量に慄きを隠せず呟いた。 一方の加賀谷はというと、月島との対戦で得心がいったらしく満足気な表情で汗を拭い、コクピットの開閉スイッチを押し、コクピットを模したシミュレーターマシンのハッチを開いて、外に出た。 浅黒い肌に猛禽類の様な鋭い瞳に守屋よりも青みがかった銀髪の長身痩躯の男……今し方、対戦していた岸田学園の月島静丸が加賀谷を出迎えた。 「個人戦の勘は取り戻せたか?」 「お陰様でな。助かったぞ、月島」 遂に訪れた高校スポーツギア全国大会。八坂州の代表メンバー達は、開催地の砕牙州へ向かう道中の暇潰しに移動車輌に備え付けられたシミュレーターで各自、思い思いの練習を行っていた。 全国大会での種目は全て個人戦となっているため、加賀谷は個人戦の勘を取り戻そうと月島との手合わせを頼んだというのが事の次第である。 「加賀谷、お前は八坂州の柱だ……練習とは言え、簡単に敗北する姿を晒すな。士気に関わる」 満足気な表情をしている加賀谷に対し、月島の表情は芳しくなく加賀谷に苦言を吐いた。 加賀谷が振り返ると守屋や、矢神を始めとする八坂州の代表選手が呆気に取られた顔をしている。 団体戦から選ばれた代表選手達4名は公式大会で加賀谷に嫌という程、捻じ伏せられた経験があり、守屋も練習の度に地に叩き落された。 矢神も年末に善戦空しく敗退しており、小野寺にしても直接、拳を交わした事は無いが、その力は何度も目の当たりにしてきている。 代表メンバーの実に過半数が加賀谷の力をよく知っているだけに、そのショックは隠せない様子だった。 「団体戦なら兎も角、俺と月島が一対一で戦って、俺が勝ったらお前の立つ瀬が無いと思うが?」 高校卒業を目前に控えている加賀谷は、この大会が終われば守屋達の面倒を見る事も無くなる。 何より、外の世界にはまだ見ぬ猛者が多く待ち構えており、加賀谷は自身の事を一挑戦者としか思っていない。 誰が勝っただの負けただので心を乱されているようでは、まだまだだなと肩を竦めた。 「いい加減に親離れして貰わねばならんのだがな」 「自らが慕う者が敗れる姿を見て良い気になれる筈もあるまい……察してやれ」 加賀谷がやれやれと肩を竦めている内に一行を乗せた車輌は州境を越え、砕牙州へと到着する。 (内紛があったって言ってだけど八坂と同じで平和その物じゃないか……ま、砕牙も広いしな) 「何を呆けている?」 半月ほど前、父から砕牙州の動乱を聞かされていた守屋は砕牙の変わらぬ姿に安堵しつつも、拍子抜けしたような表情で倭国の面影を色濃く残す砕牙の景色を眺めていると、背後から凛とした少女の声が投げかけられた。 「小野寺先輩に矢神サン……この面子の中で俺一人、浮いているなと思って」 守屋が振り向くとコーチ役の小野寺織、親友兼ライバルの矢神玲が相も変わらず、二人連れ立っていた。 二人の身長差は優に40cmを越え、並んで話しかけられると、あからさまな視点移動をせねばならず、非常に気まずい思いを強いられ辟易する思いで返事をした。 砕牙で内乱があったなどと言って、大会前のテンションに水を差すのも馬鹿らしいので、誤魔化し半分の言葉を洩らした。 三年連覇の月島静丸に加賀谷望を始め、剣戟戦闘最強と名高い矢神玲に個人戦重装備部門で砕牙州と八坂州の二州を制覇した小野寺織。 団体戦から選ばれた4人の選手達もいずれも劣らぬ実力と実績を兼ね備えた猛者達。 自分が酷く場違いな場所に居るのでは無いかと、少しばかり居心地の悪い思いをしていた。 「阿呆が! だから、この大会で立ち塞がる奴等を全員、薙ぎ倒しに来たんだろうがよ!」 そして、矢神は気合を注入してやると言わんばかりに守屋の背中を思いっきり引っ叩いた。 「まあ、私の名の影に隠れんよう精々、気張る事だな」 何かと対照的な二人組が、これまた対照的な物言いと態度で守屋を激励した。 程無くしてから、2万㎡の広大なバトルフィールドをカバーする球状ドームを12棟も備える地球50州の中でも最大の規模を誇る砕牙州立スポーツギアスタジムに到着した。 「いつもの事とは言え、仰々しい警備だな……」 スタジアムの周辺を取り囲む様に警察のパトロールギア、エイテンが警備に当たっており月島と加賀谷は同じような事を口にし、微動だにしないエイテンを流し見ている。 守屋もエイテンが要塞を取り囲む鉄の騎兵に見えてしまい、何処と無く物々しさを感じていた。 「人が多く集る場所ってのはテロリストみたいな武装犯罪者にとって格好の餌食ですからね」 現に守屋達は去年の八坂州野宮地区大会の決勝戦で50機のスポーツギアに襲われており、決して非現実的な話では無かった。 「だけど、精鋭揃いの大会でテロなんてやるかなぁ? 返り討ちに遭うだけって分かんないかな?」 守屋の意見に反論したのは守屋と同様、全国大会初出場の選手、片桐セイナだった。 「向こうはそう思っていない。アームドギアを使っている連中の中でも軍人崩れの奴なら尚更な」 「全国の精鋭による大会とは言え、スポーツ目的のギアでは遊び同然というわけか……」 守屋の反論に加賀谷もやや不機嫌になり憮然とした表情で洩らす。 確かにこの大会に出場している選手ならば、最低でも単騎で五十機を殲滅出来るような猛者揃いだ。 だが、それは相手がスポーツギアで違法ギアに身をやつす様な操縦技術の低い搭乗者であればの話だ。 アームドギアと、スポーツギアではスペック差が10倍も20倍もあり、交戦するなど無謀以外の何物でも無い。 「だから、守る側もああやって高性能なギアを大量に配置しているんでしょうね」 「暇そうに突っ立ってるだけのオッサン達よりも下に見られていると思うと何だかなァ……」 「好きな様に思わせておけば良いでは無い。どうせ、性能が同じなら逆立ちしても私達には勝てんよ。 逆立ちしても勝てんから、寝てても勝てる様な高性能なギアを使って守っているのだからな」 あからさまに不満気な矢神に対し、小野寺が宥める様に声をかけるが矢張り、不機嫌そうだ。 (……大会の規模が大きくなる程、人も物も金も動く、開催地になりたがるわけだな) 選手専用の連絡路の窓から客席を覗くと途方も無い数の観客が試合を観戦している姿が守屋の目に映った。 (情報規制を行うわけだ。内紛があった州を開催地に選ぶわけにはいかんだろうからな……) 「ま……鎮圧したって言ってたし、俺には関係無いか」 八坂州代表選手用のパドックで愛機に乗り込みギア専用地下通路を通り、競技場へと歩を進める。 薄暗い通路を通り抜けると守屋とその愛機、アイリス・ジョーカーを出迎えるのは観客達の大歓声。 そして…… 「あの機体は……機体照合開始」 守屋は対戦相手のギアを見て息を呑み、落ち着かない様子で敵機の情報を確認する。 本来なら、やる必要の無い行為だ。何故ならば―― ≪機体照合完了――サンメードマテリアル社製スポーツギア、アイリス・ジョーカーです≫ その後も守屋のアイリスに搭載されたAIが対戦相手のギアの詳細スペックを淡々と語っているが既に守屋の耳には届いておらず、その表情は興奮と期待に満ちている。 アイリスタイプと言えば八坂州では守屋一刀の愛機というイメージが強いが、アイリスタイプの生産台数が多いという事もあり、決して珍しい機体では無い。 だが、守屋にとっては初のアイリスタイプとの対戦で、矢神との試合とは違った興奮を覚えていた。 「装備はナックルシールドの完全打撃特化型か……潔い選手だ」 拳を交わして測るまでも無い。この場に立っているという事こそが手練の証だ。 守屋は楽しくて仕方が無いという表情を浮かべ、拳を握り絞めるとアイリスも熱気に当てられたのか、己の写し身との初めての戦いに勇み立つかの様に身体を奮い立たせた。 試合開始のサイレンが鳴り、二体のアイリス・ジョーカーの全周囲モニタにGOサインが表示されると両者は、ほぼ同じタイミングで補整されたフィールドを蹴り抜く。 脚部よりも一回りも二周りも大きな穴を穿ち、甲乙付けがたい程の砂塵と爆風を巻き上げ、弾丸の如く一直線に鋭く肉迫する。 黒のアイリスが上半身を弓の弦の様に引き絞り、必殺の間合いに踏み込むなり、荷重の全てを右足へと移し、全てのギアを撃ち砕く剛拳を白のアイリスに叩き込む。 黒のアイリスにとっての必殺の間合い。それは同型機である白のアイリスにとっても等しく、必殺の間合いであるという事を意味している。 互いにアイリス・ジョーカーの性能と特性を熟知しているが故に、相手の攻撃のタイミングを読むのは非常に容易い。 その上、黒のアイリスの搭乗者は守屋と同様、スマートに勝ちを拾いに行く様なタイプでは無いらしく、最後まで立っていれば良いと考え、守る事を一切考えない鋭い攻撃を繰り出した。 互いの間合いに踏み込む白と黒。その刹那、守屋は思考を張り巡らせる。 (ナックルシールド……威力は奴の拳の方が遥かに上だ) 思考と言うには、あまりにも大袈裟、大雑把、短絡的。寧ろ、何も考えていないと言っても何の差し支えも無い。 守屋が出した結論。それは― (だが、俺の拳の方が疾い……奴の拳が最高速に達する前に押し潰せる。いや……) 何の躊躇も無い愚直なまでの最高最速、超高速の閃拳を黒の拳に叩き付ける。 黒の搭乗者は何ら驚いた様子も無い。寧ろ、そう来るであろう事は予想していた。 いや、予想以上の思い切りの良さに堪え切れず口の端を釣り上げた。 (威力はこっちが上。力で捻じ伏せる。いや……) 『その拳を叩き壊す!!』 愛機も同じなら、搭乗者の物の考え方も似たり寄ったり。 似た者同士が放つ最速の拳と、最強の拳が真正面からぶつかり合う。 だが、白の拳が如何に瞬速を誇ろうとも純粋な力の前では相手を制するには到らない。 とは言え、黒の拳が全てを砕く剛拳であろうと圧倒的な瞬拳の前では、その剛力を完全に生かす事も出来ず、白の瞬拳と黒の剛拳は鏡合わせの様に、その身を硬直させていた。 「チッ……」 守屋は仕留め切れなかった事に苛立ち舌打ちするが、それとは裏腹に満足気な表情をしている。 並大抵の相手ならば、今の一撃で拳ごと頭部を叩き潰せていた程の一撃だ。 それを力押しで阻まれた事に守屋はアイリスの格闘戦能力と、相手の技量と度胸に舌を巻きながら歓喜した。 守屋はチャクラムを起動させ、バックラーブレードを展開し、気化した衝撃緩和剤を振り払うかの様に切裂き、呼吸と共に白のアイリスは疾風迅雷の一閃を斬り放つ。 黒のアイリスがシールドナックルで、バックラーブレードを受け止めると、その激しい衝撃が火の粉となって周囲に降り注ぎ、鉄巨人達を幻想的に染め上げた。 守屋は円を描く様に身を翻し、ナックルシールドを撫で斬りにして、高速回転しながら火花を散らすチャクラムシールドナックルの切れ目を狙い撃つ。 内側から破壊されたナックルシールドは小さな爆発を伴い、破片の雨となって二輪の菖蒲を叩いた。 黒のアイリスは慌てた素振一つ無く、無手となった右腕を後ろ手に白のアイリスへと間合いを詰め、守屋もあらゆる奇手奇策に対応出来る様にブレードを構え直し、剣閃を切り結ぶ。 間断無く放たれる無数の剣閃を黒のアイリスはナックルシールドで受け流し、後ろ手に隠した右腕を振り上げ、黒光りする鉄塊で五月雨の様に放たれる剣閃を食い止める。 「戦斧かッ!」 守屋の斬撃を受け止めた黒い鉄塊、それは反り返った片刃を持ち一枚板の合金で鋳造した刀身と、柄が一体となったトマホークだった。 出力と機体重量は全く同じ。単純な力の押し合いでは拮抗するのは自明の理。無意味と言っても良い。 黒のアイリスは守屋の力を受け流しながら身を翻し、一瞬にして守屋の背後を取り、その後頭部に目掛けてトマホークを力任せに振り落とす。 守屋が背後を振り返る事無く、背中から黒のアイリスの懐に飛び込み間合いを詰めると、黒のアイリスが振り落としたトマホークは白のアイリスの頭部よりも遥か前方。 漸く訪れた勝機に守屋はニヤリと笑い、何も無い空間に黒の残影を残した右腕を受け止め、黒のアイリスの軸足を蹴り払い重心を崩し、背負い投げで地面に叩き落す。 流石の黒のアイリスも投げ飛ばされた経験は無いらしく満足に受身も取れず、背中から派手な音を立てながら地面に叩き付けられる。 だが、アイリス乗りの性か搭乗者もしぶとく地面に叩き付けられ、機体がバウンドすると共に機体を一回転させ、再び両の脚でしっかりと大地を踏みしめる。 守屋も別段、驚きもしない。一年満たずとは言え、このアイリス・ジョーカーで多くの強敵達との激戦を潜り抜けて来たのだ。 如何なる時、如何なる場所、如何なる相手であっても最後の最後まで倒れる事を知らない鉄巨人。 アイリス・ジョーカーが鋼の身体に不屈の魂を宿すスポーツギアだという事を身をもって知っているからだ。 守屋は黒のアイリスが斧を構え直したのを確認して、攻撃を再開しようと身を沈めると試合中断のサイレンが鳴り、アイリス・ジョーカーのモニタには試合中断のサインが表示される。 怪訝な表情をしていると大会本部からマップデータが転送されてきた。そのタブに記載されている文字は―― ――脱出経路 十二に分かれたスタジアムで激しい激闘を繰り広げ、それに熱狂していた観客達が静まり返る。 スタジアムが静寂に支配されるのも一瞬。スタジアムの外で鋼が断ち切られる様な轟音が轟いた。 そして、徐々に近付いて来る爆音と、航空機の排気音によく似た耳をつんざく高音がバトルフィールドに響き渡った。 「避けろ!! 黒のパイロット!!」 守屋が外部スピーカーのスイッチを入れ、叫びながら駆け出すと同時に空から光の粒子が撃ち放たれ、大地を蹂躙しながら黒のアイリス・ジョーカーの背後に迫り寄る。 黒のアイリスの搭乗者が試合とは全く別次元の絡み付くような殺気を感じ背後を振り返ると、吐き気を催す程のドス黒い殺気を内包する光の粒子が眼前にまで差し迫っていた。 そして、それが恐ろしい物だと直感的には理解していても、粒子の奔流に神秘的な物を感じ、見惚れたまま動きを止めてしまった。 「クソッ……逃げろって……」 守屋は大地を蹴る脚に力を込め、黒のアイリスの腕を引っ手繰る様に掴み上げると同時に黒のアイリスの半身が光の粒子に飲み込まれ始めた。 「……言ってるんだ!! 死にたいのか!!」 守屋は苛立ち一つ隠さず、黒のアイリスを光の粒子から引っ張り上げ、安全圏へと蹴り飛ばすと黒のアイリスはよろめきながら、転倒しないように何とか踏みとどまる。 「ビーム兵器だ! スポーツギアの装甲なんか一瞬で蒸発するぞ!」 それまで呆けていた黒のアイリスの搭乗者は守屋に怒鳴りつけられステータスパネルを見て息を呑んだ。 光の粒子に飲み込まれていたのは半身のみ。それも一瞬だけだったのにも関わらず、堅牢を誇るアイリス・ジョーカーの強靭な右腕が消滅しており、全身に深刻なダメージを受けている。 更にコクピット内にはビーム兵器特有の異臭が入り込んでおり、黒のアイリスの搭乗者はこの悪臭がまるで自分を死に誘う死神の気配の様にも感じて酷く狼狽した。 ビーム兵器の威力はスポーツギアの装甲程度なら一瞬で溶かし尽くし、紙一重で避けたとしてもエネルギーの余波で内部機構に深刻なダメージを与える。 「ジョーカーならまだ動ける! 今、動けば死にはしない! さっさと逃げろ!」 黒のアイリスの搭乗者は守屋の檄を受け、這う様にして連絡通路へ向かって走り出す。 本来のアイリス・ジョーカーにとっては瞬く間に駆け抜ける事の出来る程の距離にも関わらず、全身を灼かれたせいで上手く走れない。 だが、懸命に足を動かしどうにか連絡通路の入り口まで後一歩の所まで辿り着く。 これで一安心だと安心した所で黒のアイリスの搭乗者はある事に気付いた。 ――響く、足音は己の足音のみ あの恐ろしい粒子の渦から、自分を救い出してくれた白のアイリスの搭乗者が後から着いて来る気配を感じ取る事が出来ない。 「……まさか」 黒のアイリスの搭乗者は総毛立つ思いをしながら、背後を振り返ると白のアイリスが連絡通路に背を向け、空を見上げていた。 「何をしてるの! 君も早く!!」 搭乗者は外部スピーカーのスイッチを入れ鬼気迫る声で叫ぶが、白のアイリスは背を向けたまま、身動き一つしない。 「この会場には霧坂が居る……露払いもせず我先に逃げるわけにはいかん」 そして、守屋とアイリス・ジョーカーは空を――いや、黒のアイリスに光の粒子を放ったギアを二体のアームドギアを睨みつけた。 「じゃ、じゃあ……私も……」 黒のアイリスの搭乗者はあまりにも無謀過ぎる戦いに挑もうとしている守屋に助勢しようと渋々、身を翻した。 「相手はアームドギアだ。スポーツギアで太刀打ち出来る相手じゃない。その損傷状況なら尚更な」 「だ、だけど君だって……」 「問題無い。コイツはあの手合いとも戦える特別製だ。ジョーカー……フルドライブだ」 守屋は尚も食い下がる黒のアイリスの搭乗者の制止を無視して、競技用では無く戦闘用のシステムを起動する。 プラズマジェネレーターが紫電を放ち異音を立てながら、アイリス・ジョーカーに更なる力を与える。 全身に回るエネルギーの渦は過負荷状態となり、膨大な熱にアイリスは湯気を浮かべ、陽炎を揺らめかせると背面部のカバーが開きマント状の放熱シートが広がる。 「八坂高校一年、守屋一刀だ。またいつか、決着をつけよう」 守屋はスタジアム内に降り立つ二体のアームドギアに向かって駆け出し、外部スピーカーの音量をMAXにして叫ぶ。 「逃げろ、霧坂! この場は俺が抑える!!」 守屋の叫びが霧坂に届く。しかし、それはアームドギアのパイロット達にも届いている……いや、聞かせてやった。 一人は侮蔑の笑みを浮かべた。アームドギアを相手にスポーツギアで勝負を仕掛ける? 正気か――と。 もう一人は苛立ちの表情を浮かべた。ガキのスポーツ用品如きで俺達を抑える? ヒーロー気取りのクソガキが――と。 案の定、安い挑発に引っ掛かった二体のアームドギアはバトルフィールドに降り立ち、アイリス・ジョーカーを攻撃目標に定める。 地球統合軍主力量産アームドギア、ストライカー。本来ならば違法組織の手に渡る事など絶対に有り得てはならない程の超高性能機だ。 固定武装は二種、腰部に収容された二振りのビームセイバーに、肩部のメガビームキャノンとシンプルながら、去年の秋に攻め込んできたバリエントとは比べるべくも無い程の性能を持つ。 本来ならば泣いて謝ってでも逃げ出したくなる様な相手だが、身体の各所に真新しい損傷をこしらえた二体のストライカーの状況を察するに絶体絶命には程遠い事が見受けられた。 守屋を嘲っている方は左半身にキャノン砲を失う程の大きな損傷を受けており、守屋に苛立っている方は両腕を欠落しておりセイバーを振るう事が出来ないでいる。 彼等に対し、手傷を負わせた相手は警備に当たっていた警察のパトロールギア、エイテンである事は間違い無い。 だが、エイテンは一世代前のアームドギアをベースに改修を受けた機体で、武装も周囲に影響の及び難い低出力のビーム兵器を装備しており、数の利があるとは言え、ストライカーに太刀打ち出来るような性能では無い。 装甲強度、出力、耐久性、耐ビーム防御、稼動時間、機動力、追従性、環境適応能力。 それらの全てがエイテンより遥か上を行き、特にビームに対するバリア機構は余程の大出力ビーム兵器で無ければ無力化は非常に困難を極める。 エイテンの装備では損傷を与えるのは不可能と言っても良い……それにも関わらず、彼等の損傷は酷く激しく、ストライカーの能力を持て余しているのは明らかだった。 (コイツ等は軍人崩れの類じゃない……あまりにも稚拙過ぎる) 尤も、それはギアの操縦技術に限った話であって、彼等の放つ殺気は少しの陰りも無く、違法ギアの様な度を越した悪ふざけをしている連中とは違い、明らかに暴を生業とする者達である事は紛れも無い事実だ。 何より、守屋とアイリスに勝機があるのかと問われると限り無くゼロに近く無謀な戦いである事に違いは無い。だが、この戦いにおける守屋の勝利条件とは敵を撃破する事では無い。 今、こうしている間にもスタジアムの外では敵と警察が凄まじい激戦を繰り広げている最中で、援軍の到着も時間の問題だ。ただ、それまでの時間を稼ぎ切りさえすれば良いのだ。 「毎回毎回、良い所で邪魔しやがって……いい加減にうんざりんだよッ!!」 霧坂達が避難するまでの間、敵の目を自分に引き付るだけで良いのは分かっている。 その為だけに、この場に留まっているのだから。しかし、それを理性で理解していても感情は別だ。 事実、守屋は辟易し苛立っていた。毎回だ。毎回、こうなのだ。 初めての襲撃では、アイリスを工場送りにされ、ビーム兵器恐怖症を患い、二度目の襲撃では試験勉強の邪魔をされ、三度目の襲撃では矢神との決着を邪魔された。 四度目は霧坂が捕らわれた。そして、五度目の襲撃でこの有様だ。何故、こうも自分が心の底から楽しんでいる時に横から沸いて出て来るのか? 「本当にうんざりだ……失せろ!!」 ストライカーが右腕から反り返った光の刃を形成し、巨大な砲口に粒子を集束させるが、守屋は恐れる事無く、二体のストライカーに肉迫する。 ビーム兵器に対する恐怖に打ち勝ったわけでは無く、ただ恐怖よりも怒りの方が遥かに上回っているだけだ。 血反吐が出るまで殴ってやらなきゃ気が済まない――ただ、その一心で一直線に間合いを詰める。 ビームの威力を目の当たりにしながら、恐れる事無く猛進する守屋の姿に驚きに目を剥くのも一瞬―― 「ヘッ……いい度胸だ。自分が死なないとでも思ってやがんのか?」 左上半身を煤けさせたストライカーがブースターを吹かし、彼我の距離を一瞬にしてゼロにする。 「テメェ等は頭を潰しゃあ何も出来ねぇんだろうが!!」 ストライカーの搭乗者が言い終わるよりも早く、ビームセイバーがアイリスの頭部を跳ね飛ばす。 頭部を失ったアイリスは断続的に大地を蹴りつける両脚の動きを止め、力を失ったかの様にストライカーにもたれ掛かった。 「ハーハッハッハッハッハ!! 映画のヒーローみたいになれなくて残念だったなぁ!!」 ストライカーの搭乗者の哄笑がスタジアムに響き渡った。 アイリスのコクピット内では光が失われ、モニタには敗北の二つ文字が表示されているが、守屋の表情に寸分の衰えも無い。 「悔しくて、何も言えないかぁ? なぁ! おい!!」 嘲りの言葉を何度浴びせてもアイリスからは何の返答も無い事に気を良くしたストライカーの搭乗者はセイバーを逆手に持ち変え、コクピットに狙いを定める。 「エマージェンシーモード……再起動」 スポーツギアの事を勘違いしている者は非常に多い。例えば、頭部が弱点であるという事。 頭部を失う事により行動の全てが停止するというのは、ただの敗北演出に過ぎない。 そして、エマージェンシーモード。主に違法ギアの襲撃や災害発生時の避難時に使用する機能だ。 想定外の脅威から脱出する際、頭部を失ったからと言って一々、機能を停止していては話にならない。 試合のルールや損傷に関係無く迅速に避難する事に特化しており出力も引き上げられる。 一瞬にして力を取り戻したアイリスは上体を逸らし振り落とされるビームセイバーの柄目掛けて掌底を叩き付ける。 斬撃軌道が内側に抉りこむように弧を描き、自らのプラズマジェネレーターを貫き大爆発を巻き起こす。 「馬鹿野郎が! ガキなんぞに良い様にされやがって!!」 ビームキャノンのエネルギーをチャージしていたストライカーの搭乗者が悪態を吐き捨てながら、荒々しくトリガーを引いた。 燃え盛る爆炎のせいでアイリスの姿が見えないが、撃破された味方を撃てば外れたとしても余波で消し飛ばせる。 脱出出来ているか如何か分からないが精々、運を味方に付けるんだなと考えながら躊躇う事無く、仲間のギア目掛けてビーム砲を撃ち込むと見当違いの方向からチャクラムが飛来する。 「ガキの玩具が通用するか!!」 ストライカーの搭乗者は上半身を捩り、キャノン砲の砲身でチャクラムを叩き落すと、爆炎を切裂き刀身が剥き出しになったバックラーブレードが投擲される。 今度は無防備を晒し、装甲だけで弾き飛ばす。アームドギアにはスポーツギアの武装では傷を付けるのは困難……いや、不可能だ。 「効かねぇって言ってんだろうが、クソガキが!!」 それでも守屋は爆炎に紛れて三度目の投擲を繰り出すが、爆炎の目暗ましも長くは続かない。 爆炎が晴れ、ストライカーのモニターが片膝を付くアイリス・ジョーカーの姿を映し出す。 搭乗者は残虐な笑みを浮かべ、ビームキャノンのターゲットをアイリスに合わせトリガーを引くとビームキャノンの砲身が閃光を放ち、光の粒子は猛り狂ってストライカー自身を呑み込んだ。 表情を一片させ機体状況を確認するとキャノンの砲身に守屋が三度目の投擲に使ったストライカーのビームセイバーが深々と突き刺さり、砲身にスパークを走らせていた。 「クソガキ……ッ!!」 悪態を吐き終わるよりも早く火球に飲み込まれ、球状のコクピットブロックが吐き出される。 「クソはお前等の方だろうが……霧坂、聞こえるか? 此処はもう大丈夫だ。早く避難するんだ」 守屋は一人ごちながら機体を立ち上がらせ、霧坂の元へ向かおうとすると背後から凄まじい爆音が鳴り響く。 新手の登場に苛立ちながら背後を振り返ると砕かれた壁の破片を弾き飛ばしながらベースキャリアが内部へと侵入し、中から無傷のストライカーが現れた。 「新手……これ以上、好き勝手にやらせるかッ!!」 アイリスが勢い良く駆け出すと、ストライカーは慌てた様子も無く掌から光の剣を形成し縦横斜めに三つほど剣閃を紡ぎ上げ、アイリスを弾き飛ばす。 蹈鞴を踏んで再度、前進しようとすると間の悪い事にフルドライブの長期使用の影響でオーバーロードが発生し、四肢から黒煙が吐き出される。 「ッ……限界か!?」 新手のストライカーは好機とばかりに左右から剣閃を繰り出し、その剣閃が一つ、二つと数を増していく度にアイリスの動きが鈍化していき、四肢の爆発と共に動きが完全に停止する。 アイリスが膝から崩れ落ちようとしているのも構わず、肩口から腰にかけて袈裟懸に斬り裂かれ背中から倒れ込むと、その衝撃で切断面から守屋が外に放り出される。 全身を叩き付けられた守屋が目を見開き立ち上がろうとすると、その視界に右腕を天に伸ばしたまま地に倒れ伏し炎上する愛機が守屋の目に映った。 完膚なきまでの完全なる敗北。せめて主の命だけでも救われた事に満足したのかアイリス・ジョーカーは燃え盛る炎の中へと消え、守屋は失意のまま意識を失った。 ↓ 感想をどうぞ(クリックすると開きます) +... 名前
https://w.atwiki.jp/sousakurobo/pages/644.html
統合歴329年12月25日 特に慌しいわけでも無ければ、暇というわけでも無く、偶に普通じゃ無い出来事に巻き込まれつつも 極々、普通の高校生として日々を過ごしていると、気付けば新年が訪れるまで残すところ一週間。 真冬の凍て付く空気も何のその。八坂の街は聖誕祭一色に包まれ、人々は華やぎ色めいていた。 実際のところ聖誕祭だのクリスマスだの言われても、宗教や信仰の概念が無い統合歴の時代において この年間行事が一体、何を意味をしているのか、何がめでたいのかはよく分かっていない。 しかしながら、倭国人の原点である日本人も適当に理由を付けて楽しんでいたのだから問題は無い。 何千年の時を経たところで、日本人のノリが地球全土に広まった程度にしか変わっていないのだから。 そして、物語の中心、私立八坂高校では年間行事で学校主催の聖誕祭パーティが開かれている。 主催者である理事長、弥栄栄治曰く― 「ほら、学園物のドラマとかアニメだとありがちなんだけど、実際にやっている所って少ないじゃない? だから、僕が学校の運営をやる時は必ず盛大な聖誕祭パーティを開こうって決めていたんだよね。 なーに、金ならウチのエース陣がスポンサー契約料を稼いできてくれるから…え?アイリスの修理費? 大丈夫だよ。足りないなら父親の脛でも齧るよ。二十年以上そうやって生きて来たんだし、馴れっこさ。」 ―との事である。 八坂州の何処からか怨嗟の咆哮が聞こえてきそうなコメントだが、八坂高校の生徒と職員にとって 知った事では無く、皆、思い思いの格好で着飾り、級友と談笑しながらパーティの開始を待っている。 「霧坂、気合入ってるじゃん!流石の守屋も一発で落ちるだろ!?つーか、俺が落ちそ~!!」 西行を始めとする男子生徒の面々が霧坂の格好を見るなり、鼻息荒く狂喜乱舞する。 肩と背中が露出した黒いサテンのドレスに胸元と腰には色栄えのする赤いリボンが拵えられている。 そして、赤い薔薇の造詣が施されたヘッドドレスと、胸元のリボンが豊満な胸の谷間と合わせて 愛らしさと妖艶さの強烈なギャップを醸し出し、これ以上に無い程、霧坂の魅力を引き立てていた。 「な、何で、そこで守屋君が出て来るのよ?」 霧坂は西行の子供染みたからかいの声に対し、あからさまに動揺し、白磁の如く白い肌は朱に染まり 金糸の様に艶やかなか髪が豊かに育った胸と共に揺れ、男子生徒の心の声が一つになった。 『エロい』『眼福眼福』『守屋殺す』 思ったより、まとまっていなかった。 「またまた~!とぼけちゃって~!」 「私をプレゼント~!とか言ったりして~!!」 西行が霧坂をからかった事を皮切りに女子生徒も混じって、霧坂を囃し立てる。 そして、誰もが面白いネタ程度にしか考えていなかった為、霧坂の変化に気付けなかった。 朱に染まった霧坂の頬。だが、それは照れでは無く、怒りを纏った紅蓮の炎であるという事に。 「もー!違うってば、あんまり調子に乗って舐め腐った事ほざいているとギアで踏み殺すわよ?」 踏み殺すの部分だけ無駄に低く凛々しい声になり、皆一同に口を閉ざし、霧坂から眼を逸らした。 パーティ開催待ちの騒々しい校舎は1年3組の溜まり場だけ水を打ったような静けさに支配される。 「そう言えば、守屋君は?姿が見えないけど…まだ来ていないのかな?」 一人、少し離れた安全圏から眺めていた夕凪が静寂を切り裂いた。此の侭、放置していては 気の弱い生徒が泣き出しかねないし、今日は年に一度の聖誕祭。気まずいのはご免だと。 「今日はオーバーホールが終わったギアの調整作業があるからって朝に出ていったっきりだけど… この場に居ないって事は、まだ格納庫かシミュレーターで作業しているのかな?」 「霧坂さんは行かなくても良かったの?」 「私は補欠だし、専属ギアがあるわけじゃないからね。そう言えば、州大会の決勝戦の対戦相手に 色々、アドバイス貰ったって言ってたし、パーティが始まるギリギリまで色々、試すつもりかもだね。」 守屋のバトルスタイルはギアの性能や性質、特性を無視した、身体能力任せに戦うというもので 達人の目から見ると非常に歪で付け込み易く、御し易い相手でしか無いのだが、決勝戦の対戦相手 月島静丸は守屋の優れた身体能力を、ただで捨て置くのは惜しいと色々、世話を焼いた経緯がある。 そして、守屋はそのアドバイスを元に、朝から機体の再調整に取り掛かっているのだが、思いの他 これが難航しており、MCI搭載機乗りの先駆者である小野寺に教えを請おうとしたが、どういうわけだか オーバーホール直後でヴァイゼストの調整があるのにも関わらず、朝から姿が見えず連絡も取れない。 不幸な事に矢神とも連絡が付かず一人で四苦八苦し現在も時間を忘れて、調整作業に勤しんでいる。 「守屋も大変なんだなぁ」 分かったような分からないような、微妙な反応が返って来るが霧坂は特に気分を害するわけでも無く 多分、言っている事の意味の半分すら理解してないんだろうなと思いながら、微苦笑を浮かべた。 何事も舞台裏の事なんて部外者には、よく分からないが大変そう程度に過ぎないのだから仕方が無い。 不幸な出来事や、暴力、怪異とは一切無縁の平和な日常。霧坂は当たり前の様に幸福を享受していた。 だが、そんな彼女に何の前触れも無く、脈絡も無く、唐突に避けられぬ不幸が襲い掛かる。 そして、轟音と共に八坂高校の校庭と守屋一刀の物語に小さな亀裂が走った。 「また違法ギアかよ~!!」 腹の底にまで響く轟音に空を仰ぎ見ながら誰かが不満気な声をあげる。今年に入って既に二度の襲撃を受けている。 良くも悪くも違法ギアの存在に慣れてしまい、パーティの進行に滞りが出る事を懸念する程度にしか感じていない。 だが、空には満点の星々と大きな満月が聖誕祭を祝福するかの様に瞬くだけで、無粋な鋼は何処にも居ない。 轟音の出所は空では無く地下。何よりも、喧しいとは言えプラズマジェネレーターの駆動音とは似て異なる。 「地震…頭の上に何か堕ちて来たら大事だし、校舎から離れた方が良いかもね…」 霧坂は人形の様な表情で淡々と言葉を発し、校庭へと人間離れした速さで駆け出した。 「霧坂、待ってくれよー!」 クラスメイトが思わず制止を求めると、霧坂は何時も通りの笑顔で振り返り、何時も通りの声色で― 「ほら、こっちこっち!死にたくないから置いてくわよー!!結構、揺れるわね…ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」 ―轟音と共に裂けた地の底へ悲鳴と共に吸い込まれていった。 そして、尚も轟音と『非常に微弱』な地響きは校庭を切り裂き、地の底へと引きずり込む。 亀裂は奥深く、漆黒の闇に染まっており、中の様子が全く見えず、霧坂の安否も分からない。 「霧坂さん!?」 「お、おい…嘘だろ…?」 「ど、どうすりゃ良いんだ…?」 ついさっきまで笑っていた霧坂が地の底に消え、生徒達は真っ暗闇の地の底を目の当たりにして混乱に陥った。 「も、守屋だ!夕凪!!と、兎に角、守屋を呼びに行くぞ!!」 「わ、分かった!!」 二人は何か行動を起こして、必死に平静さを取り戻そうとギアスタジアムへと必死の形相で駆け出した。 一方、守屋は格納庫の中で霧坂が危機に陥っているとも知らず、調整作業の最終段階に入っていた。 八坂州最強の一角を担う、月島静丸のアドバイスを元に機体の重心、反応速度、出力バランスetc 其々のパラメーターを入力してはシミュレーターでテスト起動を行い、その様子を録画して 自分のイメージと実際の動きの誤差を見つけては修正しての繰り返し作業。 妥協を一切許さない地道な作業の甲斐もあってか、守屋はアイリス・ジョーカーの力を完全に引き出し アイリス・ジョーカーもまた守屋の身体能力を比較的、完全に近い形で反映する事が出来るようになり 文字通り、人機一体となり鋼の巨人、アイリス・ジョーカーは守屋の第二の身体として生まれ変わった。 「そろそろ行かないと霧坂が五月蝿そうだな。皆、めかし込むって言ってたけど…制服でも良いよな?」 守屋は調整作業の結果に満足気な表情で席を立ち、せめてタキシードに着替えるべきかと考えるが 家に戻るのも面倒臭いと結論付け、普段の一割増でスカーフの形を綺麗に整え、ブレザーを羽織った。 「守屋っ!!守屋っ!!守屋~~ッ!!霧坂が…霧坂が!!」 「五月蝿いな…また馬鹿な事言って霧坂でも怒らせたのか?」 「そうじゃなくて、本当に大変なんだよ!!」 「夕凪まで…何があったんだ?」 西行は格納庫に転がり込むなり、息を切らせながら守屋の名を連呼し、守屋は心底、鬱陶しそうな顔をするが 続けてやってきた夕凪の叫び声と、今にも泣き出しそうな、二人のただならぬ様子に守屋は表情を一変させた。 「さっきの地震で地面が抜けて…その中に霧坂さんが落ちたんだ!!」 「…地震?お前等、レスキューギアの手配は?まだなら今すぐ呼べ。」 守屋は地震という単語を聞いて、表情を訝しませるが二人の言動から霧坂が危機に陥った事を悟り 特に慌てた様子も無く、淡々と二人に指示を出してモバイルシステムを起動し病院に事情を説明し アイリス・ジョーカーのコクピットハッチを開き、中に乗り込み始めた。 「守屋!?」 「八坂病院に搬送依頼。父さんの名前出したから最優先で来てくれる筈だ。」 「いや、そうじゃなくて…」 「レスキューギアの手伝いに行ってくる。二人とも危ないから離れていろ。」 余りにも淡々とした口調と平坦な態度に二人は眉を顰めるが、次の瞬間、考えを改める事になる。 守屋はアイリス・ジョーカーを起動するなり、天井を突き破って5月の襲撃事件に活躍したカタパルトに飛び乗り 自身を校庭に向けて撃ち飛ばし、放物線を描きながら空を駆け抜ける。 「馬鹿女がッ!厄介事を引き起こして、俺に押し付けるのがお前の役目だろうがッ!! よりによって、何でテメェが厄介な目にあってやがるッ!!ふざけてんじゃねぇぞッ!!」 守屋は周囲の景色が目にも止まらぬスピードで通り過ぎていく様にも目もくれず大声で叫び出した。 ―俺が傍に居れば、こんな事には ―自惚れるな ―こんなのは嘘だ 思考など全くまとまっていない。今はただ霧坂を救い出す事だけを考えていれば良い。 だが、霧坂の身に…そう考えると恐怖や自責などが守屋の頭の中で高速でループし続ける。 表面だけでもと二人の前で平静さを取り繕っていたが、一人になるなり恐慌状態に陥っていた。 「西行達が言っていたのは……ッ!?地面が抜けたって、抜けすぎだろうがッ!!」 聖誕祭パーティの演出としてライトアップされていた校庭は守屋の予想を遙に越える惨状と成り果てており 大きく裂け、ぽっかりと大きな口を開いた地面は夜の闇よりも黒く、深く、奈落への底の入り口のようにも見え 守屋の脳裏に霧坂の一番見たくない姿がフラッシュの様に浮かび上がり、恐怖に慄き身震いする。 (駄目だ。霧坂が助けを求めているかも知れないってのに、俺が怖がってなんていられない…) 守屋は被りを振って、裂けた大地の中に飛び込み、バックラーブレードを展開し壁に刃を突き刺し 落下速度を落としながら、アイカメラの光量とセンサーの集音機能の出力を最大値まで引き上げ 壁を切り裂きながら高度を落として行き、やがて、アイリス・ジョーカーは深淵の闇に飲み込まれた。 守屋はアイリス・ジョーカーの双眸から放たれる光を頼りに周囲の把握に努めるが 切り立った壁が眼に映るだけで未だに底は見えず、地下に向かって落下を続けるだけだ。 霧坂は何事も無かったかのように無邪気な笑顔で守屋の救出を待っていた。 いいや、霧坂は何も感じなくなり静謐を湛えて守屋の到着を待たずして朽ち果てていた。 思考の中にある霧坂の笑顔が明滅し、無残な亡骸に切り替わり、守屋の心臓が跳ね上がる。 ―霧坂の笑顔を失いたくない。 守屋は左隣に視線を動かすが誰も居ない。ギアのコクピットの中なのだから当然だ。 だが、霧坂は守屋の意思や感情に関係無く、どんな時でも守屋の隣に居たのだ。それが守屋の日常だ。 勝手に隣に居着いて、人の心を乱しておきながら、勝手に消え失せるなどと許して堪るものかと。 「霧坂ッ!!何処だッ!?返事をしろッ!!死んでたら怒るぞッ!!返事しろッ!!」 守屋は悲鳴混じりの怒声を張り上げる。地面の陥没は守屋の予想以上に深く 笑って済まされる怪我どころか、良くて重度の後遺症が残る程の大怪我をしているか ―臓腑を吐き出し、肉片と眼球を周囲に飛び散らせて既に死んでいる。 守屋にとって都合の良い妄想を頭の中に思い浮かべ、時には怒りで恐怖を打ち消し、冷静さを装うが 切り裂かれ陥没した校庭の深度は守屋の予想を遙に越え、人の身よりも頑強なギアですら危険が及ぶ。 状況を察するまでも無く、霧坂の生存は絶望的。守屋にそんな現実を受け入れる事が出来る筈も無く 折れそうになる心を無理矢理、奮い立たせ守屋は必死の形相で霧坂に只管呼びかけ続ける。 無限に続くかと思われた自由落下も遂に終点。アイリス・ジョーカーのアイカメラが地底に広がる大地を照らす。 守屋は足元に何も無い事を確認して、壁を蹴ってバックラーブレードを引き抜き、地面に飛び降りる。 着地と同時に泥飛沫がアイリス・ジョーカーの白い装甲を汚し、柔らかい地面に死人の様な表情の守屋に生気が戻った。 「泥…霧坂…居るんだろ…返事しろよ!声を聞かせてくれよ!頼むから!!」 地面が柔らかい泥で出来ているとしても、奇跡でも起きない限り、この高さから落ちて無事で済む筈が無い。 済む筈が無いのだと思考の片隅で守屋に警鐘を鳴らすが、守屋にはこの泥しか縋りつける物が無い。 このまま現実を受け入れるのは狂ってしまいそう…いや、既に狂い出しているのかも知れない。 現に守屋は母親とはぐれて、泣いている子供の様に霧坂の名を狂った様に呼び続ける。 「頼むよ…霧坂ぁ…!!返事をしてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!」 滂沱と溢れ出る涙で守屋の表情は無残に歪み、嗚咽混じりの雄叫びが地底に木霊する。 そして、守屋とアイリス・ジョーカーは膝から崩れ落ち地面に突っ伏した。これ以上、自分を誤魔化すのは無理だ。 霧坂の遺体を見たわけじゃないが、高層ビルから飛び降りるのと何ら大差は無いのだ。都合良く奇跡など起きない。 ―生きている筈が無い。 「霧坂ぁ…霧坂ぁ…霧坂ぁあああああああッ!!!」 一度、流してしまったせいか堰を切ったかのように涙が流れ、守屋は霧坂の名を連呼しながら嗚咽を漏らす。 ―こんな現実は嘘だ。ある筈が無い。今も霧坂は俺の助けを待っている。 だが、自らを奮い立たせようとしても駄目だ。生存不可能だ。霧坂の遺体を探しているに過ぎない。 「守屋…君…?」 霧坂が息絶えながら、守屋を呼びかける事など絶対に有り得ないのだ。 「霧坂ッ!?何処だッ!?何処に居るッ!!」 守屋は霧坂が生きているなど絶対に有り得ない事だと思っていた。 だが、アイリス・ジョーカーのセンサーが霧坂の今にも途切れそうな声を幻聴でも無く、確かに拾い上げた。 守屋はセンサーを頼りにアイカメラで忙しなく地面を照らすと泥まみれで横たわる霧坂を発見する事が出来た。 「霧坂ッ!?」 我に返った守屋は慌てて愛機を霧坂の元へと移動させ、その身を屈ませ飛び降り、霧坂を抱き上げた。 五体満足で意識もしっかりしている。暗がりのせいで霧坂がどんな傷を負っているか確認は出来ないが 意識があるのならば、今すぐ病院に運べば大事になる事は無いと考え、守屋は安堵の表情を浮かべる。 「もう…何て顔してるの?窮地に陥った…お姫様を救いに来た…ヒーローの顔じゃない…よ?」 霧坂は守屋のグチャグチャになった顔を見て、痛みを堪えながら普段通りの調子で笑うが 今すぐにでも消えて無くなってしまいそうな気がして、却って守屋の不安を煽る事になった。 「大丈夫だよ…痛いってだけで…死んでない…痛っ…」 霧坂は守屋の雰囲気を察して、気丈に振る舞い、身体を起こそうとするが苦悶に満ちた表情を浮かべ 守屋の腕の中で崩れ落ちる。霧坂の身体の何処からか血液がジクジクと流れ出し、生温い感触が 両腕を伝い汚していく、霧坂の命が流れ出ていくような恐怖を感じ、守屋は霧坂を強く抱き締めた。 「痛い痛い!マジで痛いって…抱き締めてくれるのは嬉しいけど…ホントに痛いんだってば…」 「わ、悪いッ!!」 霧坂の非難の声に守屋は我に返り、霧坂を抱き締める腕の力を緩め、口元をきつく閉じた。 今は恐怖も不安も戸惑いも、何もかも後回しだ。既に目的は果たし、此処には用が無い。 「驚いたよ…いきなり地面が抜けるし…君は…私がピンチになったら…必ず来てくれるね…」 「人を好き勝手に振り回しておいて、勝手に死ぬな。モーションリンク脚部限定。腕部固定。」 守屋は霧坂を抱きかかえたまま、アイリス・ジョーカーに乗り込み、元来た道へと引き返す。 ゆっくりと、しかし、足取りは力強く、泣き腫らした顔も今ではすっかり普段の顔付きに戻っており 霧坂は守屋の首に腕を回した。自身の血で守屋の顔を汚している事は最早、気にしない事にした。 (矢張り…地震じゃない…) 霧坂を救出した事で守屋の頭が動き出し、頭の片隅に追いやっていた西行達の言葉を思い出す。 地面が抜け落ちる程の大地震だったにも関わらず、守屋は地震の発生を感知する事が出来なかった。 そもそも、地震など起こっていないのだから。そして、何処まで続くとも知れない横穴やギアでも 自由自在に動ける程の巨大な空間は何者かの手によって作り出されたとしか言い様が無い。 「霧坂、痛むかも知れないが…しっかり捕まっていろ。少し、無理をするからな。」 「ぎゅ~~…って、元気な時に出来れば良かったのに…」 霧坂は些か、落胆した表情で守屋の首に回した腕に少しだけ力を込める。これが精一杯なのだろう。 守屋は霧坂の言葉を無視して、周囲の気配を探り取る。用は済んだが、もう一波乱退けねばならない。 アイリス・ジョーカーよりも一回り大きな鋼を纏った鉄巨人が暗闇から姿を現し、守屋の行く手を阻む。 (何なんだ、コレは……獣の殺気……?) 人の形をした鋼から、飢えて正気を失った猛獣の様な殺気を気取った守屋の脳が反射的に警鐘を鳴らす。 アームドギア以前の主力兵器ごと兵器の記憶を呼び起こすが守屋の記憶の中に該当機種は存在しない。 「見ての通り、取り込み中だ。今すぐ失せろ。」 守屋の言葉が通じていないのか、そもそも聞く気が無いのかは定かではないが異形は咆哮で応え 錆びた間接を軋ませ、地を蹴り、天井を蹴り、壁を蹴り、縦横無尽にアイリスの周囲を飛び回り翻弄する。 古錆びた鋼を身に纏った異形の動きは、まさに険しい自然を自由自在に飛び交う獣の動きその物。 (凄まじい運動性能だが…) 「霧坂、阿呆みたく動かすから、少しだけ我慢してくれ。」 「うん…大丈夫…あんまり…痛くしないでね…」 霧坂は守屋の首に回した腕に力を込め、守屋も霧坂を抱きかかえる腕に力を込め、無言で肯く。 相変わらず、殺気は守屋を突き刺したままだ。―何故、守屋は飢えた獣の様な殺気だと思ったのか? ―簡単な事だ。 「新型か旧型かは知らんが、狂った獣の始末は慣れている。5秒で片付ける。」 異形は天井を蹴り、アイリス・ジョーカーの周囲を跳弾の様に目にも止まらぬ素早い動きで死角を突く。 背後の頭上から二つの鋼拳が迫っているのにも関わらず、守屋はその身を微動だにさせないでいる。 未知の異形の動きを捉える事が出来ないからか?それとも、霧坂という異物の存在が動きを鈍らせているのか? 否― 守屋は左足を軸に機体を独楽の様に旋回させ、異形の鋼拳が眼前に迫り来るのも意に介さず 異形の首筋に目掛けて、右足を大鎌の様に振るい壁に縫い止め、力を失った異形の拳がだらりと垂れ下がる。 どれ程、俊敏だろうが有効な攻撃に繋げられる動作は極僅か、それらの情報の取捨選択さえ間違わなければ 態々、眼に頼らずとも向けられる殺気とタイミングを見計らえば、この程度の芸当など造作も無い。 どちらにせよ、満天の星空の光すら届かぬ、地下の世界において視覚など大して役に立ちやしない。 異形が悔しげな咆哮を轟かせ、戒めを解こうとするが守屋が追撃に移る方が圧倒的に早い。 軸足にしていた左足一本で地を跳ね、後方に宙返りをしながら異形の顎を蹴り上げ、右足一本で着地。 更に前方に宙返りをすると同時に異形に踵を叩き落とし、頭部を粉々に打ち砕く。 「フルドライブ…1-Second」 アイリス・ジョーカーのプラズマジェネレーターが異形以上に異様な咆哮を放ち、我が身を焦がす程の力を漲らせ 叩き落した左足を地に着け、再び、軸足にして勢い良く突き出された巨槍の様な胴回し蹴りで、異形の腹部を貫く。 そして、守屋とアイリス・ジョーカーに腹を蹴り破られた異形は洞窟の壁に叩き付けられ、動作を停止した。 「4.7秒…予定通りだ。待たせたな…霧坂、脱出するぞ。」 「これは…元気な時でも…二度とゴメンだね…」 「悪いな。これ以上、早く片付ける事が出来そうになかったんだ。喋っていると舌噛むぞ。」 下半身のバネを使って大きく跳躍し、壁を蹴り飛ばし、壁から壁へと飛び移りながら上へ、上へと 10m、20m、30m、40m…そして、地表に飛び出し、群がる野次馬の頭上を舞い、校舎の前に着地させる。 「ねぇ…もしもさ…無事に戻ってこれたら…」 「もしも…なんて、言葉は聞きたくない。絶対に戻って来い。」 不吉な事を思わせる霧坂の言葉に守屋は声を荒げて、目線を逸らすが霧坂は守屋の顔を両手で挟み 互いの目線を合わせる。二人の顔の距離は数cm、僅かにでも顔を近付けると唇が触れる距離。 「無事に戻ってこれたら……人間絶叫マシーンって…呼んでも良い?」 「……モーションリンクカット、ハッチオープン。」 機嫌を損ねた守屋は霧坂の言葉を無視して、アイリス・ジョーカーのコクピットから外に滑り降りる。 今の雰囲気は一体、何だったんだと言いたくなる言動に守屋は憤るが、霧坂の言い分も尤もな事だ。 確かに妨害者を秒殺し、とんでも無い離れ業をやってのけ、無事に地上へと帰還する事が出来たのは感謝すべき事だ。 だが、瀕死の重傷を負っているのもお構いなしに何度も天地が逆さまになり、重力を無視した様な動きをされては 流石の霧坂だって苦言の一つや二つも言いたくなる。ただ悲鳴をあげる余裕も、体力も残っていなかっただけだ。 「あはは…だけど…また助けられちゃった…ね。」 「笑い事かよ…って、お前…ッ!?何なんだよ!?」 何はともあれ、無事に戻ってこれた事もあり、霧坂の表情が和らぎ笑顔を見せる。 そんな霧坂の声を聞いて、守屋も安堵の表情を浮かべ、抱きかかえた霧坂の姿を改めて見下ろすと ライトに照らされた事で霧坂の全身を苛む数多の傷が守屋の目にはっきりと映り込んだ。 「ゾンビみたいでしょ…だから…痛いって言ったんだよ…」 「守屋!霧坂は!?」 「救助隊の人を呼んでくれ!担架もだ!」 「分かった!!」 守屋達が慌しく動き回るのを尻目に霧坂はあくまで普段通り、マイペースな態度を崩さず 守屋の腕の中で何か一言残した方が良かったかなと思いながら、安らかな表情で瞳を閉じた。 霧坂が病院に搬送されてから一時間後、守屋は自宅に戻り、父親の剣と半年振りの再会を果たしていた。 勿論、親子の会話をする為では無い。防人一族の一派、護国剣将守屋としての面会のようなものだ。 地底で遭遇した謎の兵器と人為的に作られた洞窟の存在はあまりにも異質で、自分の手に負えないと判断したからだ。 「今から一時間前に八坂高校の校庭の地下洞で交戦した機体だ。アームドギアでもスケイプゴートでも無い。 ましてや有人機でも無いが、無人機でも無い。コイツから放たれた殺気が今でも体にこべりついている。」 剣は我が子の説明に耳を傾けながら、先程の戦闘データに瞬き一つせずに直視している。 「現場の証言では地震の影響による地盤沈下が起きた…との事だが…」 「…地震だと?」 剣は地震という単語を聞いて、先程の一刀と同様、不審げな表情を浮かべた。 何故なら、地盤沈下が起きるような地震は地球上で観測されてはいないからだ。 「コイツが暴れていたのか、暴れさせられていたのか、まだ俺が見ていない何かが存在していたか…」 「この機体を見たのはお前一人か?」 「いいや。俺も『知り合い』も何も見ていないし、何も知らない。俺のギアは何も記憶していない。」 剣は一刀から戦闘データを受け取り、聞くべき事は全て聞いたと言わんばかりに踵を返した。 だが、一刀は無言を肯定と受け止め、不満に思う事も無ければ、追求しようとさえしなかった。 「お前が此方側の世界に属すれば…嫌でも全てを知る事になる。」 一刀が何を言わんとしているのか何を知りたがっているのか、剣は何と無くではあるが気付いていた。 我が子ならば、放っておいてもそういった疑問に直面する事であろうことを予測するのは容易い事だ。 一刀が、そうなるように育て、鍛え上げたのは、他ならぬ守屋剣自身なのだから。 そして、剣は自らの役目を果たす為に八坂高校へと赴き、役目を終えた一刀は八坂病院へと向かった。 父親の態度に不満があったわけでは無い。自分のやるべき役目は既に終え、後は専門家の仕事だ。 現に父、守屋剣が去って5分後、八坂高校の校庭は警察から地球統合政府中央議会の管理下に置かれた。 地球の最高権力機関が動いたという事は矢張り、守屋一刀の手に余る事態が起きているという事なのだろう。 地球は五十の州によって一つの国として成立している。だが、全ての大地を人間が支配しているわけでは無い。 手付かずのまま自然が残っている地域も少なからず、存在している。だが、その他にも風変わりな地域がある。 それは人間も動物も植物さえ存在しない文字通り何も無い地域があり、其処には守屋が地底で遭遇した 異形のマシンともバケモノとも付かない何かが巣食っており、一般的には秘匿の存在とされている。 アームドギアを始めとする兵器の数々は抑止力では無く、それら異形を駆逐する必要最小限の戦力として 地球統合政府が用意した物であって、治安維持などという名目など、ついで以外の何物でも無い。 実際、異形から奪い取っても何の価値も無く、此方から近付かない限りは害も無い。 ただ極一部の地域とは言え、人外の者が地球を支配しているという事実が酷く気に食わないだけだ。 害の有無では無く、この星は人間の世界であって、それ以外のモノの支配を許すわけにはいかないのだ。 それ以上に今回の件は今までと事情が大きく違っている。異形が八坂州の地下に存在している事。 一刀が排除した異形は今まで多くの異形を駆逐して来た剣ですら見た事の無い存在だった事。 そこで剣は異形の専門家とも言える人物、翁こと君嶋悠に意見を求めると、珍しく彼自身が動き出した。 珍しいどころか、彼の40年以上の人生の中で君嶋悠が戦闘行動に移るのを見るのは初めての事だ。 実力の程は守屋剣の父、斧鷹(フヨウ)曰く、悪ふざけを体言したかのような存在であるとの事である。 だが、君嶋悠が自ら動き出した思惑を守屋剣達が知る事は無い。何故か? 「本当に一人で行かれるおつもりですか?」 「この世界の事はこの世界の人間で始末を付けるのが道理だがな、偶には身体を動かしたくてのう。 ただの我儘じゃて。暫くの間、人払いを頼む。加減が効かずに巻き込んでは大事だからの。」 まるで散歩にでも行くような軽い口振りで呵々と笑って、地底へと軽い足取りで飛び降りる。 そして、重力に従い、自由落下しながら君嶋は微苦笑を浮かべた。 「220年前にワシが殺し損なった敵の残党かも知れぬ…などと口が裂けても言えんからのう。」 君嶋悠の思惑。単純なストレス解消というのも間違いでは無いが、一番の理由。 ―それは自らが過去に犯した失態の尻拭いでしか無い。 君嶋は50m以上の高さから飛び降りた事など無かったかの様な軽い足取りで着地し、真っ暗な洞窟を眺め回す。 霧坂が安全な校舎から離れ、一人で校庭へと避難すると同時に地盤沈下が発生し、落下した先に過去の君嶋が 討ち洩らした敵が存在しており、すぐさま駆けつけた守屋一刀の手によって排除されたというのも腑に落ちない。 「例の玩具では討滅する事は不可能―守屋の子倅にとってあまりにも都合が良すぎる。そうは思わぬか?」 君嶋が首を動かした方向へと影が伸び、中から異形が這い出て来る。それも一体や二体では無く 地下洞窟を埋め尽くすように数十の異形が、その数を増やし、君嶋は口の端を釣り上げた。 「一匹見たら何とやら…久方ぶりに見るが、相変わらずゴキブリの様な連中よの。」 だが、残り滓と呼ばれた鋼の異形達は問い掛けを無視して、ただ黙々と君嶋を取り囲む。 「ダンマリか…200年以上も地の底に隠れて人語を解せなくなる程、呆けおったか?」 何を言っても異形は何の反応も見せず、君嶋がやれやれと肩を竦めると一体の異形が君嶋に殴りかかるが 一機と一人の間に白い閃光が走り、岩石の様な拳を片腕で受け止め、嘲りの表情を浮かべる君嶋を仄かに照らした。 「人語どころか、誰が貴様等を滅ぼしたかさえも忘れたようじゃな?」 その一言を皮切りに異形の群れが君嶋に殺到する。 「阿呆共が…忘れたのならば白痴の如き、貴様等の本能に呼び覚ましてくれるわ…滅びの恐怖をなァッ!!」 君嶋の荒々しい叫び声が洞窟内に響き渡り、その身を中心に気流が猛り狂ったかの様に巻き上がり 飲み込まれた異形の群れが次々と壁に叩き付けられ、鋼の肉体を破裂させ、体液を撒き散らしながら塵と化す。 だが、数が減るどころか延々と増え続け、異形の群れは臆する事無く、音も無く君嶋に攻撃を浴びせようとする。 「まだ簡単に壊れてくれるなよ?『俺』が動くのは久々なんでなァ!」 君嶋の赤い毛が、燃え盛る焔の様に艶やかな紅に変色し、頬や目尻の皺が消え若々しい青年の顔付きになる。 だが、君嶋の変異を気にした風でも無く異形は萎縮する事無く、君嶋の元へと殺到し、君嶋を殴り、或いは蹴る。 「ハッ…穴倉生活が長すぎて言葉や俺の事を忘れるどころか、本来の戦い方さえ忘れたのかよ? 200年そこいらで随分とボケたじゃねぇか!通りで平和な世界の学徒にすら秒殺される筈だな!」 10mを越す異形に殴られようが、蹴られようが君嶋は何の痛痒も感じない。それ以前に衣服の乱れすら無い。 「言葉、恐怖、エーテル能力の使い方も忘れた白痴どもがッ!覚醒者の力を思い出して死にやがれ!!」 君嶋は悪意、敵意、殺意、嫌悪の全てを言葉に乗せ、只管、真っ直ぐに異形の群れに叩き付ける。 だが、異形の群れに君嶋の言葉は未だ届かず、君嶋はその表情を嫌悪に歪ませながら、印を結ぶ。 漆黒の闇よりも深く暗い洞窟に、奈落の闇よりも深い君嶋の影が洞窟を侵食し、侵略し、掌握する。 そして、一切の光が届かぬ闇の世界に只管に黒く、歪に折れ曲がり、翼が闇から地面へと這い上がった。 誰からも必要とされる事は無いであろう巨大で醜悪な翼は伸びでもするかのように、その身を広げた。 醜悪な翼の無造作な屈伸に巻き込まれた異形の群れが次々に、その身を粉砕され霧散する。 その上、舞い散った無数の羽が異形の頭上に降り注ぎ、串刺しにして切裂き、細切れに解体する。 醜悪な翼に脅威を感じ取った異形の群れは、翼に飛びつき闇の底に叩き落そうと拳を振るうが 翼に飛びついた瞬間、大蛇の様な羽毛に絞め潰され、噛み砕かれ、吐き捨てられる。 化け物が化け物を一方的に踏み躙る様はまさに地獄絵図の具現であった。 だが、異形にとっての一番の不幸は醜悪な翼が未だに戦闘行動に移っていないという事だろう。 醜悪な翼は、ただ姿を現しただけに過ぎず、近くに居た異形が勝手に朽ちていったに過ぎない。 <我は人界の守護者…人間だけの為に生き、人間だけを護り、人間の手によって滅せられる存在也> 君嶋の言霊を聞き受け、黒い翼は、自らの間接が砕け散り、肉片が飛び散るのもお構い無しに君嶋の身体を包み込む。 そして、君嶋の瞳孔が縦に裂け、灰色の瞳は紅に染まり、異形の存在すら溶かし込む黒い世界を焔の双眸が切裂く。 「往くぞ…我が力の片割れ。我々には老いる事も、錆付く事も、死ぬ事も、朽ちる事も許されていない。」 醜悪な翼が中から膨張する光に切裂かれ― 「限定解除―魔王―」 瞬時に地下洞全体に肉眼でも視認可能な程の高密度の結界と言う名の処刑場が構築され 絶対者の手より、人間の領域に踏み込んだ愚者に対し、審判と言う名の一方的な殺戮が下された。 「随分と早いお戻りですな。」 君嶋が再び、中年男性の姿に戻り非常に満ち足りた表情で地上へと舞い戻るなり守屋剣が彼を出迎える。 「軽作業程度で無為に時間を割くわけにはいかぬからのう…じゃが、態々、出向いた甲斐はあったのう。」 ―そう言って君嶋は楽しそうに哂った。 何故、220年前に滅ぼした敵が今になって、力を失ってでも君嶋の前に姿を現したのか? いや、異形にとって守屋との接触は完全に想定外の事故でしか無く、本来の目的は既に果たしている。 君嶋悠に先んじて、ある人物と接触しあわよくば――君嶋に遭遇した時点で既に異形の目論見は絶たれたも同然。 そして、この瞬間、この世界に住む誰かとこの世界の外に居る誰かの運命が平坦とは程遠い方向へと歩み出した。 #back(left,text=一つ前に戻る) ↓ 感想をどうぞ(クリックすると開きます) #region #pcomment(reply) #endregion